就職市場に新展開、東北で始まる「地元志向」 新人育成に熱意ある地域の企業が狙い目だ

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たとえば、A社が「社長や役員が東京に出張したときには、東京在住の応募者にコンタクトをとって会うようにした。個別対応をすることで、話をする機会が増えた」と報告すれば、さっそく同様の取り組みを行ってみる。B社からは「地域外からの新卒者には、住まい探しもケアした」と聞けば、その内容を情報共有し、自社のやり方に合わせてアレンジするなど、具体的で多くの地方企業が得意とする細やかな内容です。

さらに11名の採用者に対する新卒研修は、各社独自のものだけでなく、共同で運営。研修を通じて、地元出身でない学生も、企業を超えた同期のネットワークがつくれます。受け入れ側の先輩社員やマネジメント側への研修も合同で行うなど、地域を挙げて採用活動を行っています。

ともすると採用活動での競合もありうる企業同士ですが、一緒に取り組むことで、相乗効果を生んだり、学生へのPRの機会を増やしたりするなどの効果も期待できます。

紹介したのは気仙沼の事例ですが、「地域にどう人を集めるか」という問題意識を共有し、地域で企業同士あるいは行政とも連携を取って採用をする動きは、他エリアにも広がっています。採用数が多くはないため、新卒市場全体から見ると大きな数字となって表れてくることはまだありませんが、地域ぐるみの採用は今後も広がっていくと思われます。

東北7大学が連携、相互にエントリーも

大学側の取り組みも、これまで以上に踏み込んだものになってきています。地域の若手社員を募って、面談や座談会などフェース・トゥ・フェースで情報に触れる機会を作ったり、県内企業や工場見学のバスツアーを組んだりしています。地元の企業を招いて行う企業研究講座なども増えているというのが実感です。

またインターンシップでの大学間連携は全国各地で始まっています。東北では、岩手県立大学が主幹となって、東北地方の7大学が連携し、連携大学に所属する学生は相互にエントリーできる仕組み。例を挙げると、岩手県出身で現在山形大学に通っている学生が、普段通っている山形大学を通じて、岩手県の企業のインターンシップにエントリーすることができるというものです。

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