2017年は「地味できれいなオジサン」が勝つ 草食投資隊の「ゆく年くる年」さよなら2016年

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中野:そのトランプ氏は明けて1月20日、正式に第45代米国大統領となります。2017年の世界経済を考えるうえでも、政治は外せないテーマだと思いますが、トランプ氏が大統領に就任した後の米国経済はどうなるでしょうか。私は、トランプ氏が掲げている経済政策を、レーガノミクスの再来と思っているのですが、トランプ氏はレーガン大統領に比べて非常に有利な環境でスタートを切れます。少なくとも米国内の景気は、レーガン大統領の時に比べ、今のほうがはるかに良い環境にあります。

渋澤:ただ、景気が強い時に政権がスタートして、4年後に行われる選挙の時にボロボロになっているのだけは避けたいところです。できれば、逆に景気が悪くて、4年後に向けて徐々に盛り上がっていくほうが良いのですけれどもね。

中野:トランプ氏が今考えているのは、やはりこれから4年間、いかに米国経済を成長路線に乗せ続けられるか、ということでしょう。その点、今までの歴代政権の多くは積極的な財政政策を行っていないので、トランプ氏は経済の成長維持を目的にして、積極的な財政政策を打ち出してくる可能性は非常に高いと見ています。

結局は富裕層優遇なら、人心が離れるリスク

渋澤:懸念材料もたくさんあります。先ほど、米国社会の「隔離」という指摘をしましたが、トランプ氏に票を入れた人は、グローバル社会のネットワークとは無縁な、地域に住む白人が中心ですよね。でも、トランプ氏の現実はどうですか。自分はニューヨークにあるトランプタワーの住民で、モデルみたいな娘がいて、組閣では財務長官にスティーブン・ムニューチン氏、商務長官にはウィルバー・ロス氏など、ウォールストリート界隈の人が目につきます。それで本当に、こうした地域の白人支持層が納得できる政策を打ち出せるのかという点は、大いに懸念されます。減税についても、やり過ぎるとトランプ氏の周りにいる富裕層には大きなメリットがあっても、それ以外の支持層の人々にはほとんどメリットがない、などという事態にもなりかねません。しかも、ホワイトハウス幹部には親族を入れてはならないという規則がある中で、娘のイヴァンカさんの婿殿であるジャレット・クシュナー氏の動きの警戒が絶えません。こんなことをしていたら、何かのきっかけでいずれ人心が離れていくという爆弾をトランプさんは抱えていますね。

中野:まるで某独裁国家のようですね。ところで安倍首相は、トランプ氏が大統領に決定した途端、会いに行きました。その行動については賛否両論ですが、どう思いましたか?

渋澤:オバマ大統領が現職なのに、頭越しにいきなりトランプ氏を訪ねるのはいかがなものかと伝統的な外交の常識では問われています。しかし、現在、先進国でいちばん地盤が固くて国内情勢に縛られない安倍首相が、国際秩序の行方がわからない現状で、軽やかな外交を通じて新たな展開をつくることは良いのではないかと思っています。

藤野:セイ・ハローでいいのですよ。とにかく行くことが大事です。

中野:ただ、訪問して安倍首相が良い気分になった途端、トランプ氏は「大統領就任後に即TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)から離脱する」と言って、安倍首相の顔を潰したなどと言われています。

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