全国の雑煮文化は、関ヶ原で二分されていた

餅の形などにさまざまな違い

お雑煮のナゾに迫ります(写真:anzphoto_Inc, / PIXTA)

正月料理の代表「雑煮」。地域色豊かな伝統食だが、福井の一般的な雑煮は、みそで煮込んだ丸餅にかつお節をのせる。カブを加える程度の至ってシンプルなスタイルは、質素倹約を重んじた武家の習慣の名残ともみられ、堅実な県民性とも重なる。元日まであと1週間。お雑煮文化を追った。

形は関ケ原で二分

全国の雑煮レプリカを展示する福井県小浜市の小浜市食文化館や、伝承料理研究家の奥村彪生(あやお)さん(奈良県)の著書などによると、雑煮は室町時代に京都で生まれ、江戸時代に参勤交代によって全国に広まったとされる。

餅の形は岐阜県の関ケ原辺りを境目に二分する。東京など東の雑煮はすまし汁に焼いた角餅を入れるのに対し、福井県を含む西の雑煮は丸餅を煮込んで作るのが基本形だ。同館の一矢典子学芸員は「丸餅には円満に暮らせるようにという願いが込められている。東ではめでたい場に『みそをつける』としてみそを嫌い、餅は敵をのす(討つ)という意味でのし餅(角餅)が好まれているといわれている」と語る。

高松市ではあん入りの丸餅を使い、岩手県釜石市ではクルミのしょうゆだれにつけて食べ、広島県では具にカキを加える。鳥取県や島根県出雲地方の雑煮は小豆の煮汁に煮た丸餅を入れる。「地産地消が原則だった時代に形作られたため、地域による特色が生まれた」と一矢学芸員。日本は地形が起伏に富み、地域によって気候風土と産物が異なることから、雑煮もバラエティー豊かになったらしい。

福井県は赤みそ(田舎みそ)文化圏とされているが、家庭のルーツや好みによって白みそ、すまし汁も使われる。奥村さんによると、簡素な内容は、質素倹約に生きた武家の習慣の名残とみられているという。また、小浜の一部に伝わる雑煮は具はなく、黒砂糖がかかる。砂糖が貴重だった時代、北前船の寄港地で手に入りやすかったことが理由とされ、ハレの日の料理として親しまれている。

一方、県内では正月に餅を食べない「餅なし正月」を送る地域がある。美浜町の民俗学者、金田久璋さんの調べでは、17カ所の集落や一族に伝わった風習で、今も▽福井市黒丸町▽同市四十谷町▽高浜町上瀬-などで守り続けられている。金田さんは「石川、滋賀、京都など近府県と比べて断トツに多い。落人伝説、白蛇の言い伝え、餅つきの音で雪崩が起きたという伝承など由来は多岐にわたる」と話す。

総務省や全国餅工業協同組合の調査によると、福井県の1世帯あたりの餅の年間購入数量は約4キロで、ここ10年は横ばいの状態。福井市西開発1丁目にある「越前笹木餅」の笹木裕和社長は「若い人は餅を食べなくなったというが、雑煮だけは別ではないか」と語る。家庭で餅をつかなくなった影響か、ここ数年はスーパーからの引き合いが多くなり、生産量はわずかながら年々増えているという。

福井では餅は煮るのが一般的なため、煮崩れしないコシの強さが求められる。「三が日は3食雑煮を食べる」という笹木社長は、きねつきであることはもちろん、複数のもち米を配合し、毎年割合を工夫することで、雑煮の“主役”を張る粘りを生み出している。

30日まではアルバイトが加わり、平時の倍の15人体制で生産する。「1年の食は雑煮から始まる。おいしいお餅を食べて、よいスタートを切ってほしい」と話していた。

福井新聞の関連記事
福井って変 仏教スゴすぎ
キュウリを育てては絶対ダメな町
イケメン高校生日本一に福井の男子


 

関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
IS掃討後も混沌続く中東

IS(イスラム国)の敗退が明らかになりつつある。その掃討に貢献したクルド人勢力が独立の動きを見せ、中東の新たな火種に。特にイラクとシリアで一層の混乱が懸念されている。