松山英樹プロの快進撃を支える努力とは何か 世界最高峰の戦いの中で自分を変えてきた

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以前に比べれば、笑顔が増え、表情が豊かになった。日本メディアに応えるボキャブラリーも口数も増え、英語で質問されている際、うなずきながら聞く場面も増えた。

メディア対応が柔軟になったのは、単に場数を多く踏んだからそうなったのではなく、松山が松山なりに気にかけ、ひっそりと努力をしてきたからこその変化である。

英語も着実に上達している。試合中にルール委員を呼んだとき、以前の松山は「ボブさんどこ?」と通訳兼マネージャーのボブ・ターナー氏を大慌てでロープ内へ呼び寄せていたが、今ではルール対応はすべて自力で行うようになった。

同組の選手やキャディと言葉を交わす場面は、以前は「おっ!しゃべってる!」と驚かされたが、最近ではそれが当たり前のシーンに変わった。

ファンサービスを心掛け、ボランティアの人々に敬意と感謝の気持ちを込めて接する米ツアー選手たちの姿を手本にしてきたのだろう。大会関係者やファンを気遣い、チャンスさえあれば、松山自身が走っていってボールやグローブをプレゼントする。にっこり笑ってスマホの記念写真に収まったりもする。

スター選手としての自覚が深まり、周囲の見る目も変化

ファンから注目される存在、子供たちから憧れを抱かれる存在であることの自覚が松山の中でどんどん強まっているのだと思う。その自覚の下でファンサービスに努め、米ツアーで覚えた"いいこと"を輸入する形で日本でもチャリティや社会貢献に努めている。

そんな松山の姿をロープの内外から、あたかも見ていないようで実は凝視している米ツアー選手たちの視線は、松山が米ツアー参戦を開始した2013年ごろと比べれば、今ではすっかり優しく温かくなった。そして何よりリスペクトの念が溢れている。

「なぜ、こんなにも強くなったのか?」

この問いにズバリ当てはまる答えは、やっぱり見つからない。ただ、私はこう思っている。米ツアーで必死に戦ってきたこの4年間に遂げた変化と成長、いやいや生まれてから現在に至る24年間の彼の努力と忍耐、そのすべてが今、ようやく実り始めている。だから「強くなった」のではないだろうか――。

舩越 園子 在米ゴルフジャーナリスト

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ふなこし そのこ / Sonoko Funakoshi

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。93年渡米。在米ゴルフジャーナリストとして新聞、雑誌、ウエブサイト等への執筆に加え、講演やテレビ、ラジオにも活動の範囲を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。アトランタ、フロリダ、ニューヨークを経て、現在はロサンゼルス在住。
 

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