政府予算案、税収増に期待するのは無理筋だ 社会保障の伸びを抑えても財政赤字は再拡大

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12月22日、首相官邸で閣議に臨む安倍首相と麻生財務相(写真:共同)

12月22日、政府は2017年度予算政府案を閣議決定した。この予算案は、年明けの通常国会で審議されることになる。

2017年度予算案は、どう評価できるだろうか。結論からいえば、社会保障費をはじめ歳出の伸びを目標通り抑えることはできたが、基礎的財政収支の赤字は今年よりむしろ増えてしまい、2020年度の財政健全化目標の達成に急ブレーキをかける形となった。

2018年度までの予算編成の方針としては「経済・財政再⽣計画」が閣議決定されており、その2年度⽬の予算にあたる。その中で、2017年度に予定されていた消費税率10%への引き上げは延期されており、経済再⽣と財政健全化の両⽴をどう実現するかが、問われた。

歳出抑制は能力に応じた負担見直しで前進

歳出面では、一億総活躍社会の実現を掲げ、保育士・介護人材等の処遇改善、待機児童解消加速化プランに沿った保育の受け皿拡大、給付型奨学金の創設などの予算を盛り込んだ。これらの予算は、ペイ・アズ・ユー・ゴー方式(新規の支出や減税などを行う際に財源確保を義務づける)で厳格に財源を用意できたかは怪しいが、全体としては、「経済・財政再⽣計画」での「⽬安」とされた一般歳出(政策的経費)の伸びを5300億円に抑えることができ、歳出総額は97兆4547億円となった。

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中でも、最大の政策的経費である社会保障関係費は、対当初予算比4997億円増の32兆4735億円と、「経済・財政再⽣計画」での「⽬安」を達成した。

2017年度の社会保障費については、本連載記事「医療介護ではどの費用項目が削られるのか 17年度予算編成で大詰めの社会保障費抑制」でも取り上げたが、厚生労働省からは、自然増を6400億円とする予算要求が上がっていた。「経済・財政再⽣計画」での「⽬安」では、自然増を5000億円に抑えるとされていたため、その差1400億円分について、どの要求を削減するかが問われていた。

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