「越境EC」は爆買い終焉後の救世主になるのか 有望ベンチャーに巨額マネーが集中

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そんな中、越境ECにかかわる業務を1社でカバーしようとするベンチャー企業がいる。中国国内の一般ユーザー向けにECアプリ「豌豆公主(ワンドウ)」を展開するインアゴーラだ。

同社と提携すれば、メーカーは日本語で商品を登録し、日本の倉庫に商品を送るだけ。ワンドウのアプリ経由のほか、アリババグループの「天猫(Tモール)」など提携するさまざまな有力モール内で販売できる。

さらに、インアゴーラは物流や決済も担うほか、商品特性に合わせて影響力が大きいブロガーを起用した紹介動画を制作するなど、商品のアピールまで手掛けている。

高い利便性を売りに、子供服のミキハウスなどのアパレル大手、東急ハンズ、ドラッグストアのアインズ&トルペなど、顧客を広げている。

CEOはキングソフトの会長も務める

CEOを務める翁永飆(おうえいひょう)氏は伊藤忠商事を経て複数の起業を経験。スマホアプリ・広告事業を手掛けるキングソフトの会長でもある。「中国と日本の運営がバランスよく回らなければ越境ECで物は売れない。システムやサービスを別々に契約しなければならないのはメーカーにとって利便性が低い」と力説する。

11月にはサービスの拡大に打って出た。これまではワンドウとして各ECモール内に出店し、商品を販売していたが、アリババグループの「淘宝網(タオバオ)」が運営する越境ECサービスと提携。ここに出店する10万以上の個人販売店に対し、日本製品の仕入れのサポートを始めたのだ。インアゴーラを利用する日本企業にとって、販売先は格段に広がった。

インアゴーラは今、日本で最も注目を集めるベンチャーの一つだ。創業は2014年だが、これまでの調達額は47億円に上る。産業革新機構やみずほ銀行などが出資するファンド「WiL」も株主だ。WiL共同創業者の松本真尚氏は、「現地のネットワークとIT業界の知見を備えている。ここでアクセルを踏み込めば、他社は追いつけない」と期待する。

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