ニッポンブランド再生への処方箋 もう一度ブランドで勝負するために

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イノベーションやデザインを持ち込みにくいカテゴリーでも、製品主役のブランド育成は可能です。日用品化してニュース性に乏しいボトル入りミネラルウォーター業界では、Evianがファッションデザイナーとのコラボレーションによるボトルを導入して、上手にPR展開しています。カラフルなリボンをあしらったPaul Smithバージョンや、一輪の花をモチーフにしたIssey Miyakeデザインのパッケージによって、他ブランドと異なるEvian独自のブランド資産を築き上げているのです。

なりふり構わぬ手段として、どうしても自分で独自性を打ち出せない場合、「Co-branding」という手法があります。台湾のPCメーカー Acerは古くからPCやマウス上にFerrariのシンボルマークをあしらった「Ferrari」エディションを発売しています。レノボもコカ・コーラ、NBA、オリンピック、ディズニーなどのグローバルブランドとのコラボ製品を出しています。自分より強力なブランドの力を拝借するこの手法、本質的なブランド育成とは言えませんが、「場合の手段」としてはありえます。

サービス業のブランドを創るには

サービス業に目を向けると、有名なのがウェスティンホテルの「Heavenly Bed」です。定期的に客室のリノベーションを行うというホテル業界で当たり前の慣行を、ウェスティンは画期的なブランディング手法に昇華させました。やったのは実に簡単なこと。1999年、新規導入したベッドに「Heavenly Bed」という名前をつけたのです。

すると宿泊客が新しいベッドのすばらしさをこぞって口コミ発信し始めました。「ウェスティンに泊まったら新しいベッドで寝心地がよかった」で終わらずに、「Heavenly Bedはすごくいい」という口コミが多くの旅行客に伝わって、体験者が増えていきます。それにつれて名称にポジティブなイメージが蓄積され、「Heavenly Bed」は瞬く間に単なる名前からブランドへと成長したのです。

その後さらに、お客様から「Heavenly Bed」を自宅用に買いたいというリクエストが入るようになりました。今でこそホテルグッズのオンライン販売は珍しくありませんが、リノベーションした部屋のベッドが消費者向けの商品となったのは、最初に「Heavenly Bed」という名前があって、それが付加価値を認められるブランドに成長したからです。ちなみに、その後「Heavenly Shower」や「Heavenly SPA」などへとブランド拡張が行われています。「Heavenly」がブランド資産となっていることの証です。

流通業の好例は、以前、このコラムで採り上げた、香港「新世界集団」によるショッピングモール「K11」です。K11は今後5年間で中国11都市への展開を予定。1店舗目は4万平方メートル規模の上海店で、6月28日にオープニング・パーティーが華やかに開かれました。コンセプトは、「芸術・人文・自然を融合したアートモール」です。館内のアート展示やイベントが、ナチュラルなライフスタイル志向のテナントショップ・飲食店と巧みに統合されており、ユニークな体験提供を通した顧客とのブランド価値共有を目指しています。

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