「大学付属校」の内部進学がズルく見える理由 なぜ、内部推薦や他大受験規定を隠すのか

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本社と支社の関係は、大学によってあるいは付属校の立ち位置によってさまざまだ。たとえば一般的には「付属校」と思われていても、実は大学とは別法人が経営している学校も多く存在する。当然大学との距離感は異なる。

有名なのは早稲田実業。早稲田大学とは別法人が経営しており、「付属校」ではなく「系属校」と呼ばれる。一方、慶應義塾傘下の学校は、すべて大学と法人を同じくするが、「付属校」という呼び方は使わず「一貫教育校」と呼ばれる。大学に付属しているのではなく、それぞれ独立した学校であるというアイデンティティの表明である。

AO入試で他大学を受験することも可能

拙著の執筆に当たって、私は大学への内部進学のしくみについて詳しく調べた。ペーパーテスト一発の入試で合格者を決めるのではなく、高校3年間の成績およびその他の成果を踏まえ、内部進学者を審査するしくみは、大学入試改革が目指す理想の高大接続に近い。そこに新しい高大接続の在り方のヒントがあるのではないかと思ったからだ。

高校3年間の定期試験の成績で評価が決まる学校が多いのだが、ユニークなのは立教池袋。内部推薦審査において、高校3年間の成績が占める割合は55%。20%は「卒業論文」、25%は「自己推薦」を評価する。

「卒業論文」は高2から高3にかけて約1年間に渡って取り組む自主研究。「自己推薦」は高校3年間で自分が注力したことの報告である。クラブ活動でも生徒会活動でもボランティア活動でも検定試験でもいい。定期試験をコツコツ頑張るタイプの生徒だけでなく、それぞれの生徒の個性を評価したいという姿勢の表れだ。

また、昨今の傾向として、他大学受験を認める大学付属校も増えてきている。たとえば中央。いずれの付属校においても、内部進学の権利を保持しながら、国公立大学や海外大学を受験することが可能だ。私大であっても中央大学にない学部であれば併願が認められる。内部推薦審査が始まる12月中旬まで結果がわかるAO入試や推薦入試ならばどの大学のどの学部を受けてもよい。法政も内部進学の資格を保持したまま他大学を受験することが認められている。

記事冒頭の写真にあるとおり、どの学校からどの学部に何人内部進学しているのかなど、早慶MARCH関関同立のすべての大学と付属校について、内部進学に関するデータを集め、図表にして掲載した。他大学受験に関するルールも、できるかぎり調べ掲載した。内部推薦の審査基準や他大学受験へのルールを公言する学校は多くはなかった。情報集めには苦労をした。週刊誌でもなかなかここまでの情報を網羅することは難しかったのではないかと自負している。

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