【末吉竹二郎氏・講演】地球温暖化時代における企業の役割(その4~日本のCSRを考える3つの視点~)

第11回環境報告書賞 シンポジウム・基調講演より
講師:国連環境計画・金融イニシアチブ 特別顧問 末吉竹二郎
2008年5月15日 東京會舘

その3より続き)

●自社のCSRを考える

 日本のCSRは、この数年間、ブームとも言える様相にあった。しかし今、少し沈滞しているように見える。立派なCSRの入れ物はできたが、中身を何にしようかという会話が飛び交っているようではおかしい。サブプライムローンで損失が出たから経費カットの対象に、真っ先にCSR経費が挙げられるとすれば、これは本当のCSRだろうか。

 CSRを考える視点として、次の3点を挙げる。

 1つは、CSRを他社がやっているから始めるというのは、CSRを始めるきっかけとしてはいいが、内部に定着させていくためには、時間をかけてでも「自分たちのCSRは何か」を十分に考えることが非常に重要になる。まずは、スタートラインに立ち、あとは、自ら中身を考えて消化していくことだ。

 2番目の視点は、各社がCSRにカネを使っているが、その根拠は何かということだ。だれがそんなところに会社の財産を使っていいと言ったのかという点を、日本ではあまり考えない。良い目的のために会社がやるのだから、文句を言うのはおかしいとしか考えない。そして、みんながCSRをやっているからというだけでは定着しない。やはり、そこには緩やかにでも、会社のシステムの中に組み込んでいくという作業が必要だろう。緩やかな法律的な手当てをする必要がある。
 ヨーロッパでは、そういうスタイルをとっているし、アメリカでは、判例の積み重ねで認知がされている。アメリカの法曹協会は10年かけて議論をし、リーズナブルな範囲にCEOがカネを使うのは問題ないということになった。日本で、そういう議論はどこで行われているのだろうか。

 3番目の視点は、グローバルということだ。日本のエネルギーや食料の海外依存度は大きいし、上場企業の株主の3割は外国人株主である。このような状況の中で日本は、ローカルの歌だけ歌っていていいのか。少なくとも世界の各地でどういう歌が歌われているのかを知らないで、グローバルなビジネスはできない。だから、「世界の中の日本」という視点を失ったCSRはあり得ない。自分たちが知らないものを教えてくれるCSRこそ、世界を学ぶチャンスではないか。企業は、しばしば「世界の問題を……」と言うが、日常的に世界の貧困問題が日本の企業で、どの程度なされているのか。世界の水の安全問題は、どういうレベルで議論がされているのだろうか。
その5に続く、全6回)

末吉竹二郎(すえよし・たけじろう)
国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP・FI)特別顧問。日本カーボンオフセット代表理事。1945年1月、鹿児島県生まれ。
東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。ニューヨーク支店長、同行取締役、東京三菱銀行信託会社(ニューヨーク)頭取、日興アセットマネジメント副社長などを歴任。日興アセット時代にUNEP・FIの運営委員会のメンバーに就任したのをきっかけに、この運動の支援に乗り出した。企業の社外取締役や社外監査役を務めるかたわら、環境問題や企業の社会的責任活動について各種審議会、講演、テレビなどを通じて啓蒙に努めている。
著書に『日本新生』(北星堂)、『カーボンリスク』(北星堂、共著)、『有害連鎖』(幻冬舎)がある。
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