日産自動車

e-POWERが発売から一気にトップギアに

販売台数月間1位、その躍進の理由とは

2016年11月。日産〈NOTE e-POWER〉が、月間販売目標の2倍となる2万台を受注し、軽自動車を含む全車種の新車販売台数でランキング1位を獲得した。しかも、11月2日の発売からわずか3週間でのことだ。過去1、2年で見れば、新車販売台数のランキングではその上位の顔ぶれは決まっていた。他社のコンパクトハイブリッドカーだ。価格帯、サイズ感、燃費の良さなど、多くの需要があるからだろう。だが、そこを飛び越えてきたのがNOTE e-POWERだ。いったい何があったのか?短期間で1位に上りつめるには何か鍵になることがあるはずだ。

これは可能性の車

発売から1位。いきなりトップギアにシフトしたNOTE e-POWER。その支持される理由は何なのか。

e-POWERは日産が10年をかけ実用化した新世代エンジンで、電気だけで駆動し、充電はエンジンがそれを行う。つまり充電プラグのないEV(電気自動車)だ。日産は今まで〈LEAF〉に代表されるように他社に先駆けてEV開発に取り組んできた。e-POWERはこの先進のモータードライブシステムを受け継いでおり、発電用エンジンを組みあわせた全く新しい駆動システムを生みだした。

消費者の中には、EVが購入の選択肢に挙がりつつも、充電インフラの少なさや充電1回あたりの航続距離に不安を持つ人は多い。いずれ未来はEV社会になっていくだろうが、100%EVのウィークポイントを補ったe-POWERエンジンは、少なくとも次のメインストリームとなりうる可能性を持っている。既存のハイブリッド車ではなく、よりEVライクな、そして「走れる」次世代車が望まれていたのではないか。1位というのはその結果だ。

NOTE e-POWER webサイト〈ひと踏み惚れ〉より

筆者はディーラーで試乗してみた。体感というのは言葉に代えがたいものがある。圧倒的なトルク、つまり車を押し出す力の強さが明らかに違う。上述の通り基本的に走りは「電気」だ。生み出された力はダイレクトに駆動系に伝わるため、動き出しの低速時から押し出す感覚が伝わってくる。

まるで自分の足で車を操っているかのような一体感は、運転歴の浅い人には安心感となり、ドライブ好きな人にはアクティブな操作感につながる。LEAFの開発で培った大出力モーターの高精度制御技術は、発進加速、中間加速ともに2Lターボをしのぐトルクを生むという。同社が行ったモニター調査でも91%のドライバーが「加速の違いを感じた」と回答しているのもうなずけるフィーリングだ。

シンプル・コンパクトな発明品

「e-POWER」の仕組みを紹介しよう。この車は限りなくEVに近い。日産のイノベーションを体現するLEAFで培ってきた先進のモータードライブシステムと、発電用のエンジンを組み合わせた新時代のパワートレインは充電の必要がなく、いわば「自ら発電するEV」であり、充電を気にすることなく走り続けることができる。

パワーユニットは、発電専用エンジン、駆動モーターとインバーター、駆動用バッテリーから構成されるが従来のHEV(ハイブリッド車)とは根本的に違う。(下図)

「HEV」は現在も多く走っている。従来のエンジンと電気の2つの系統でエネルギーを生むが、その構造は複雑で、ガソリン走行の恩恵を多分に受ける。しかしe-POWERは非常にシンプルな構造で、エンジンは発電のみに使われる。そのエンジンはNOTEと同タイプ、インバーターとモーターはLEAFと同タイプといったように、各ユニットはすでに実用化されている技術を昇華。そのため、これまでにない画期的なシステムでありながら、積み上げてきた信頼性を確保した新しいパワーユニットが出来上がった。

また、エンジンからの充電のためバッテリーは大容量の電力をためておく必要がなく、LEAFに比べ約20分の1にまで小型化。前席シート下にコンパクトに搭載し、NOTEらしい広々とした室内空間を実現している。

エンジンは乗り方をも変えた

e-POWERで生み出された電気の走りは、乗り方すら変えてしまった。〈e-POWER Drive〉と称されるそれは、EVならではであり、体感すると、その快適性から離れるのが怖くなる。

NOTE e-POWERのサイトではドライビングの仕組みと快適性を動画で紹介している

タイヤの運動エネルギーを発電モーターの負荷に変える「回生エネルギー」を使って、通常のエンジンブレーキの約3倍分の減速がアクセルだけでコントロール可能となる。アクセルを踏まなければ止まるほどだ。

筆者の試乗時の体感で言えば、ブレーキというよりも車全体が滑らかに制動される感覚で、決して不快ではない。

減速力を細かく制御できるのはモーター駆動の特徴であり、ドライバーの感覚に合う減速度の作り込みを実現したことは「技術の日産」の面目躍如。ブレーキペダルに踏み替える頻度が激減し、市街地走行テストでは、ブレーキのための踏み替え回数がなんと約7割も減少したという。特に、カーブ走行時や発進、停止の多い路地や渋滞時には快適さを実感するはずだ。

消費者の選択は正しかった

乗り方やフィーリングまでをも変えたe-POWERは、車の価値観を変えたかもしれない。誰もがドライビングを楽しめる感覚は、新時代の車をもっと多くの人に乗ってもらいたいと投げかけた日産の提案だ。同社の最量販車であるNOTEに搭載されたのも意図されたことなのかもしれない。販売数1位という結果は、消費者の選択であり新時代の車に呼応したのだ。

政府は、2020年までに、現在保有台数ベースで14万台というCEV(クリーンエネルギー自動車)を、100万台にまで増やす*意気込みだ。また新車販売で言えば、普及台数の80%を占める*までにしたいと考えている。日本としての大きな目標の中で、日産は、商品を進化させていくうえでの指針となる「日産インテリジェント・モビリティ」を発表した。さらなる走りの楽しさを追求すると同時に、エネルギーをどのように使い、どのように走り、そしてどのように社会とつながっていくのかについてのビジョンを明確化した。このビジョンを支える柱となるのは、同社が誇る最先端技術だ。

若者を中心に乗用車が売れないなどと言われることが多いが、果たして今後もそうなのか。先進技術が、エンジンも乗り方も変えた今、新しい価値観がここに生まれたのだ。

*経済産業省次世代自動車戦略2010より

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