廃線にしたくない!今乗るべき地方路線10選 利用者減少で厳しい路線は沢山ある

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8)JR因美線(鳥取県:智頭-津山)

因美線を走るディーゼルカー、キハ120形(筆者撮影)

因美線の鳥取-智頭は、智頭急行線経由の特急「スーパーはくと」「スーパーいなば」の走る重要ルートの一翼を担っているが、智頭-津山間は、忘れ去られたような閑散区間となってしまった。かつては、岡山-鳥取を結ぶ急行列車が走っていたが、前述した智頭急行線経由の特急に昇格したので凋落の一途をたどっている。

昼間の列車本数は少なく、1両のみの小ぶりなディーゼルカー(キハ120)でも持て余しているほど乗客が少ない。沿線には味わいのある木造駅舎が多く、寅さん映画のロケ地ともなった美作滝尾駅もある。時には、臨時列車「みまさかスローライフ列車」も運転される。ローカル線の情緒がたっぷり楽しめる区間だけに、もっと活性化できないものだろうか?

9)阿佐海岸鉄道阿佐東線(徳島県:海部-甲浦)

JR四国牟岐線の終着駅海部から甲浦まで8.5kmの短い路線。実質的には牟岐線の延伸区間である。さらに延長して室戸岬を回ってごめん・なはり線と繋いで高知へ向かう壮大な計画があったのだが、もはや実現の可能性はない。もともと過疎地であり、赤字が膨らむ一方で、沿線自治体や徳島県の支援も限界に近づいている。1992年開業の新しい路線だけにすぐに廃止にするにはもったいない気もする。

熊本地震の影響で今も一部運休続く

10)南阿蘇鉄道(熊本県:立野-高森)

立野駅を発車した南阿蘇鉄道のディーゼルカー(2008年・筆者撮影)

国鉄高森線を転換した第三セクター鉄道。トロッコ列車が走り、第一白川橋梁からの眺めや個性的な長大な駅名など話題に事欠かないローカル線として親しまれていた。しかし、2016年4月の熊本地震により甚大な被害を受け、懸命の復旧作業により中松-高森間(7.2キロメートル)は運転を再開した。

けれども、その他の区間は運休していて、とりわけ、立野-長陽間は、トンネルや橋梁の被害が酷く、復旧の見込みは立っていない。このまま部分廃止となることのないよう各方面からの支援を期待したいものだが、どうなるのであろうか?

以上、10の路線について現況をレポートしたが、これ以外にも危機的状況の路線は多々ある。また、北海道の各路線は、別途報告しなければならないほどの重大な状態だ。単に赤字だから廃止と決めつけることなく、公共交通としてのインフラ維持の問題、地域活性化、交通弱者や他地域からの移動手段確保の問題として、後悔することのないよう考えてもらいたいものである。鉄道ファンとしては、乗りに行くのが支援となることを忘れてはならない。

野田 隆 日本旅行作家協会理事

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のだ たかし / Takashi Noda

1952年名古屋市生まれ。早稲田大学大学院修了(国際法)。都立高校に勤務のかたわら、ヨーロッパや日本の鉄道旅行を中心とした著作を発表、2010年に退職後は、フリーとして活動。日本旅行作家協会理事。おもな著書に『にっぽん鉄道100景』『テツはこんな旅をしている』『シニア鉄道旅のすすめ』(以上、平凡社新書)、『テツ道のすゝめ』(中日新聞社)、『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』(光文社知恵の森文庫)、『テツに学ぶ楽しい鉄道旅入門』(ポプラ新書)などがある。

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