「エネルギー優等生」日本人に起きている変化 若い人ほど気候変動に無関心?

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日本には、気候変動よりも差し迫った問題があるという声もある。経済の停滞や少子高齢化、東アジアの緊張など、数え上げればきりがない。エネルギー安全保障を懸念する日本人は多い。福島の事故後、50基近くある原子力発電所はほとんど稼働していないことから、再生可能エネルギーへの投資を増やすべきだという声も多い。

若者の多くは、「若者の約75%が気候変動に関心がある」という統計を信じていない。質問された若者は、「関心がない」と答えると悪いから「関心がある」と答えたにすぎないというのだ。早稲田大学大学院の中松真紀(24)は、政府は意識向上よりも、具体的な行動を奨励または義務付ける努力をするべきだという。

日本のエネルギー消費量は減少傾向

2007〜08年のギャラップ社が全世界で行った調査によると、日本は気候変動に対して世界でもトップクラスの意識(99%)と理解(91%)があり、気候変動を深刻な問題と考えている割合も世界で5番目に高い(約80%)。これは小中学校で気候変動が教えられているおかげだろう。

日本のエネルギー消費量は、過去5年間年々減っているが、政府は2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で成立したパリ協定の約束を果たすため、一段とエネルギー消費量を減らそうとしている。だが、そうした政府の意欲と、「自分1人が何をしても無駄」という個人レベルの意欲の低さの間には大きなギャップがある。

それは日本だけの問題ではない。「仕方がない」と、エール大学林業環境学大学院のアンソニー・ライザロウィッツ研究員は言う。「自分の行動が気候変動にどんな影響を与えるのかを、個人が理解するのは非常に難しいものだ」。

(執筆:Tatiana Schlossberg記者、翻訳:藤原朝子)

© 2016 New York Times News Service
 

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