朝日新聞

生活者と考える
「ソリューション・ジャーナリズム」

問題解決のための新たな取り組み

新聞のあり方が変わろうとしている。これまでは記者が記事を発信して一方通行で終わることが多かったが、これからの新聞は、生活者とともに考え、生活者とともに問題解決の道を探るメディアに変わっていくというのだ。そうした変革を提唱する朝日新聞は、生活者とともに考え、話し合う場の提供も始めている。

記事への反響から生まれた「考える場」

朝日新聞で2016年の8月から断続的に連載された「小さないのち」というシリーズの記事が大きな反響を呼んだ。過去10年間の子どもの事故の記録などを専門家とともに分析し、そうした事故を未然に防ぐ手がかりを探った記事である。さまざまな角度から原因や防止策を検討した記事には、連載開始当初から多くの読者や生活者の感想などが寄せられた。

こうした動きを受けて、朝日新聞はこれまでと明らかに違う動きを見せた。この連載記事を受ける形で12月7日と8日の2日間にわたり、子どもの事故予防について議論する「朝集中会議 子どもの『まさか』を本気で考える」を東京都港区のベルサール六本木で開催したのだ。

朝日新聞社は2016年から、「ともに考え、ともにつくる」という企業理念を打ち出していた。その延長線上で「ソリューション・ジャーナリズム」という考え方を提起している。取材と報道で社会問題などの実態を伝え、その背後に潜む課題もあぶりだしながら、解決策を模索する場づくりもするというのがソリューション・ジャーナリズムの基本的なコンセプトだ。記事による情報発信だけでなく、そこからさらに突っ込んで生活者とともに考え、問題解決策を探る姿勢を強化していくことを新聞社が明確に表明するのは、過去にあまりなかったことであろう。この「朝集中会議」はまさに問題解決策を模索するための場として設定されたのである。

「朝集中会議」は集中力が高いといわれる早朝午前7時30分からという異例の時間帯に行われた。この時間帯ならば会社や大学に行く前の社会人や学生も参加しやすいという配慮でもあったようだ。1日目は、専門家や朝日新聞記者などによるパネルディスカッション、2日目は一般の参加者と朝日新聞記者がテーマ別に分かれてグループディスカッションを行い、両日ともに多様な職種のビジネスパーソンや学生、主婦など約55名が参加した。そのうち2割ほどが女性で、中には赤ちゃんを抱いた若い女性の姿もあった。

冒頭、主催者側からこの会議は、結論を出すことではなく、専門家や記者、一般の生活者などが同じ場で話し合い、考えることが目的だという主旨の説明があり、パネルディスカッションでは一般の参加者も積極的に質問し、活発な議論が展開された。ノートPCやタブレット端末を使って調べ物をしたり発言を記録したりする参加者の姿も多く見られた。2日目は、テーマごとにグループに分かれてのディスカッションが行われ、最後に各グループの代表が討議したことを発表して幕を閉じた。会議自体は両日とも1時間30分程度の短いものであったが、参加者はさまざまな視点で解決策を模索しながら最後まで熱心に話し合い、耳を傾け、真剣な様子で、2日間とも途中で退席する人は1人も見かけることがなかった。

「また参加したい」という声も

今回の「朝集中会議」は、朝日新聞の新しい報道姿勢を具現化したものであった。実際、参加した朝日新聞記者の一人は「こうしたリアルな場が大事です。今日のように記者と多様な生活者が直接会話する場が、一緒に考える場になり、ヒントを得る機会になる」と語っていた。

また、参加した女性は、ソリューション・ジャーナリズムという考え方に対し、「とてもいいと思います。事実を単純に並べるだけでなく、どうしたら解決できるかということまで考えるという姿勢はすばらしい。そういう考え方を広く普及させることは、やはり新聞にしかできないのではないでしょうか。次にまたこういうイベントがあったら、ぜひ参加したい」と語っていた。

朝日新聞は、こうしたリアルな場での議論も、紙面づくりに反映させていく方針だという。もちろんこの新しい取り組みはまだ始まったばかりであり、新聞の紙面やデジタルでの伝え方が一気に変わるというものでもないだろう。しかし、新聞報道のあり方に対する大きな問題提起であり、今後、新聞報道が徐々に変わっていく可能性はある。

いずれにせよ、今、新しい新聞報道を模索する動きが起きつつあることは間違いない。「ともに考え、ともにつくる」という理念がどのような形で結実し、ソリューション・ジャーナリズムが私たち生活者の日々の暮らしや考え方にどのような影響を及ぼすのか。今後の朝日新聞の取り組みが注目されるところだ。

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朝日新聞「朝集中会議」
 http://www.asahi.com/shimbun/shuchukaigi/