世界の大富豪が唸る「名執事」のサービス哲学 コンビニと出版社の勤務経験が基礎になった

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このようにフルオーダーメイドのサービスとは、単にご要望をお受けするのではなく、どのようなことがあっても対応できるよう、常にご主人様の行動に気を配り、仮説を立て準備をしておくことです。この時は、なんとか間に合わせることが出来ましたが、どうしても難しい場合は、それに代わる提案をしなければなりません。ご主人様の真意を汲み取り、潜在的な満足につながる提案が必要不可欠です。そういった意味も込めて、私どもは無料の響きがある「サービス」ではなく、すべてのご要望に高いレベルでお応えするという意味で「サービス」として区別しています。

人に貢献する喜びを仕事にしたいと始め、まもなく10年になります。こうしたお仕事をさせていただくまでに、さまざまな経験を通じて貢献することの喜びを学んで参りました。

クレーム処理で学んだ人に喜ばれる幸せ

新井直之(あらい なおゆき)/日本バトラー&コンシェルジュ株式会社代表取締役社長
東京都出身。大学卒業後、米国企業日本法人勤務を経て、日本バトラー&コンシェルジュ株式会社を設立。国内外の大富豪、超富裕層を顧客に持つ同社の代表を務める傍ら、おもてなし、富裕層ビジネス、顧客満足度向上に関する講演・研修、コンサルティング、実用書の執筆、数々のドラマや映画の執事監修、所作指導をおこなうなど、執事による独自の「サービス哲学」の普及につとめている。

新井氏:私の出身は北区の王子出身で、両親は、ガラス工事の商売をやっておりました。控えめで、いつも脇役。裏方で支えるというのが、幼い頃からの私の性格でした。中学生の頃はバドミントンのキャプテンもやっていたのですが、キャプテンとは名ばかりで、サボり気味の生徒に声をかけたり、試合をおこなうために他校と調整したりと、そこでも裏方的存在でした。

けれど、それが嫌というわけではなく、むしろその役割を楽しんでいました。高校は定時制も備えた所に通っていたので、夕方五時半には部活も終え、それからはコンビニエンスストアでアルバイトをしていました。

働くという経験は新鮮でした。最初はただレジを打つだけでしたが、次第に顔を覚えていただけるようになり、その人たちから「ありがとう」を言われるうちに、もっと応えたいと思うようになりました。コンビニのような、ある種画一的な商品、サービスが求められているような場所では、アルバイト店員はレジ係以上のことは求められていないかもしれません。しかし、出来る範囲内で喜ぶことをしたいと、積極的にお客様とコミュニケーションをとるようになりました。

私がいる時にしかおでんを買っていかないおばあさんや、買った商品の中からジュースの差し入れをくださるおじさん、バレンタインデーにはチョコレートをくださるお姉さまなど、そうした馴染みになっていただいたお客様からかけていただく優しい言葉。働くことの喜びを教えていただきましたね。

モノや立地では差がつきにくい業態ですが、高校生なりに、人と人のふれあいという「見えないものの価値」「コミュニケーションの大切さ」を、実感しました。この時の経験は、その後の私の働き方に大きく影響を与えました。

次ページ読者のために昼休みも使って……
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