「外国人投資家はXマス休暇三昧」は都市伝説 12月「ラスト9日」に相場を動かす人々の正体

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むしろ、傾きが小さくなっているのは証券自己取引(顧客などの注文による委託取引ではなく、証券会社による独自の売買のこと)のほうだ。数字を見ると明らかだが、2012年は165億円の売り越し、2013年は78億円の売り越し、2014年は1272億円の買い越し、そして昨年の2015年は942億円の売り越しとなっている。

12月上旬や1月の上旬には週単位で1000億円を超える売り買いの傾きが見られるのに、このように12月下旬はあからさまにトーンダウンしている。ちなみに個人投資家は4年連続で売り越している。年末は個人投資家中心の商いとよく聞かれるが、実際は税金対策などの売りがあると見られ、傾きだけを見ると年末高を妨げる存在となっている。

ここまでの株式市場では、外国人投資家の買いに対して個人投資家と信託銀行が売りのスタンスをとってきたが、クリスマス休暇入りの今週から来週にかけてもこの流れは変わらないと見ておいたほうがよさそうだ。

もちろん日経平均の緩和感応度が鈍っている点など懸念材料はある。ただ、現在のようなボックス相場ではなく、方向性が明確なトレンド相場のとき、外国人投資家はクリスマスだろうがなんだろうが、その流れには乗り続ける傾向が見てとれる。

日本株の命運を握るのはやはり外国人投資家

利益を狙える地合いを前にして休暇が取れるほど、金融機関は優しくない。筆者も証券や銀行での営業時代、取得しなくてはいけない休日を消化する際には、市場が平穏で凪相場のときを選んでいた(凪相場のはずが実際には凪にならないこともあった)。上下に大きく動いているときや今回のようなトレンド相場のときに休日を消化すると、それだけで「仕事ができない人間」と残念な評価をされてしまうからだ。

年末にかけて日経平均など日本株が上昇する相場展開を「掉尾の一振(とうびのいっしん)」というが、これは個人投資家だけによって作られる相場ではない。むしろ外国人投資家によって作られる相場展開といっても過言ではないだろう。日本株の命運を握っているのは、やはり外国人投資家だ。

インフレ期待によるグレートローテーション(債券市場から株式市場への大規模な資金シフト)が進行していることを考慮すると、売買代金は細る可能性があるものの、今週も日本を始め先進国の株高は続くと考えておいたほうがよさそうだ。オプションでプット(下がれば利益が出る)を仕込む際、オーバーナイト(日をまたいで保有すること)はリスクが高いだろう。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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