JRが「成田エクスプレス」をテコ入れする狙い 通勤利用狙い「お得なきっぷ」も発売

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その理由を見る前に、まずN’EXの沿革を簡潔に振り返ってみよう。

N’EXは、成田線成田駅―成田空港駅間開業日の1991年3月19日、専用車両の253系を使用して池袋駅・新宿駅・横浜駅―成田空港駅間を結ぶ全車指定席の特急として運行を開始した。その後順次運行区間を拡大し、現在の定期列車の運行区間は大宮駅・池袋駅・新宿駅・高尾駅・大船駅―成田空港駅間である。さらに富士山の世界文化遺産登録の翌年、2014年7月26日から富士急行線河口湖駅発着の臨時直通運転を行っている。

N’EXの最大のセールスポイントは、東京都心・周辺都市の主要駅と成田空港駅の間を定時運行で直結する利便性と全車座席指定制による着席保証の提供であるが、満席になることは少ないようだ。JR東日本は、「平均で約6割~7割程度ご利用頂いている列車もある」と説明する。

JR東日本は、これまでN’EXのテコ入れ策を度々実施している。具体的には、2001年12月1日の戸塚駅全列車停車ならびに一部列車の成田駅―東京駅・新宿駅・池袋駅間での定期券乗車特例の適用開始、2002年12月1日の渋谷駅停車、2003年10月1日の四街道駅一部列車停車および品川駅停車本数増加などが行われている。

割安なきっぷ発売や新型車導入の効果は・・・

上記テコ入れ策以外の同社によるN’EX活性化に向けた主な取り組みとしては、「おトクなきっぷ」の発売による利用促進と、快適性向上による他交通機関に対する競争優位確立の2点に集約することができる。

N’EXに乗車可能で、誰でも購入できる主な「おトクなきっぷ」としては、運賃と特急料金の両方が含まれる「N’EX往復きっぷ」(以下、「往復きっぷ」)、特急料金のみが含まれる「房総料金回数券」(以下、「回数券」)、そして「トクだ値35」が発売されている。「回数券」「トクだ値35」はともに定期券との併用が可能で利用当日の購入が可能であるが、「往復きっぷ」は利用前日までの購入が必要である。

快適性向上については、2009年10月1日、回転リクライニングシートと電源コンセントなどを備えた新型車両E259系の営業運転を開始した。新型車は「充実した車内空間、無線LANとダイヤルロック式の荷物置き場の設置、および防犯カメラの設置によるセキュリティー向上」(JR東日本)が売りだ。

しかし、そうした取り組みにもかかわらず、2012年3月17日のダイヤ改正では「輸送体系の見直し」として、N’EXの一部区間短縮と編成減車が実施された。それに伴い余剰となった車両は、同年12月1日から東京駅―伊豆急下田駅間の臨時特急「マリンエクスプレス踊り子」に使用されている。

今月16日に発表された2017年3月のダイヤ改正では、新宿方面発着のN’EX増発と大船方面発着列車などの本数一部見直し、また東京駅-成田空港駅間の3往復を6両から12両へ増車することが発表されたが、N’EX活性化の手だてを考えることは重要である。

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