一世を風靡した「堂島ロール」の深すぎる苦悩 ギフト市場開拓には第2の柱が不可欠だが・・・

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「堂島ロール」で著名なモンシェールの旗艦店、「パティスリー モンシェール堂島本店」(大阪市北区)。平日でも、印象的なオレンジの紙袋を抱えた客は絶えない(記者撮影)

「堂島ロール」で知られ、ロールケーキブームの火付け役となったモンシェール(大阪市北区、社長・金美花氏)の苦悩が続いている。

調査会社によれば、ロールケーキブームの一巡や類似商品の台頭を受けて、2012年9月期〜2014年9月期までの3年間で計7億円を超える最終赤字に転落。なんとか2015年9月期には最終黒字に転換したものの、2016年9月期はフランチャイズ契約をしていた飲食店運営会社の破産で焦げ付きが発生した。

夏には一部の取引先に支払いサイトの延長を申し出ているため、経営危機のうわさが広がった。2016年9月期は最終黒字を確保したようだ。会社側は「当社は美味しいお菓子を提供することを第一の使命としており、(業績などの)決算数値を詳しくは明らかにしていない」という。

参入障壁が低いロールケーキ

モンシェールは、学校の教師で、お菓子作りが趣味だった金美花社長が2003年に大阪・堂島で洋菓子店を起業したことに始まる。シンボルである堂島ロールが口コミで広がり、メディアへの露出が急増。一躍人気洋菓子店となった。

今や北海道から九州まで全国に22店舗を展開、海外でも韓国、上海、香港で10店舗以上を運営している。ただし、急成長の裏では大きな「ツケ」を払わされることになった。

菓子業界関係者は「ロールケーキ自体、どこでも、誰でも作れてしまう。だからこそ乱立しブームにもなったし、コンビニまで参入した。当然、目新しさが問われ、商品サイクルは短くなってしまう」と指摘する。

加えて、堂島ロールなどの洋生菓子は、店舗から1時間以内にキッチンを置き、常にできたてを提供する必要があるため、離れた場所への多店舗展開はコストを押し上げる要因となる。人材育成などの負担も大きい。ブームが終焉したことで売上高は急減、調査会社によれば2010年9月期に67億円だった売上高が、近年では45億円前後で停滞している。

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