上場したJR九州はどこまで利益を増やせるか 固定資産を一括減損して、鉄道黒字化果たす

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10月25日に行なわれたJR九州の上場セレモニー(撮影:尾形文繁)

「会社発足時に、当社の将来の上場をイメージしていた人はいなかったはず」――。

JR九州の青柳俊彦社長は、10月25日に果たした悲願の東京証券取引所1部上場について、そう振り返った。JRグループとしては、1993年10月のJR東日本、1996年10月のJR西日本、1997年10月のJR東海に続く4社目の上場だ。

JR九州以外の“三島会社”であるJR北海道、JR四国もまた、株式上場を目標に掲げてきた。しかし首都圏や大阪圏という人口集積地を抱える本州3社とは異なり、人口減少や高速道路の開通に伴うモータリゼーション化による利用者減少に苦しんでいる。ほかの2社同様、JR九州についても上場は難しいと考えられてきた。

人口減少に苦しむ中、観光列車に注力

そんな中での上場だった。JR各社が発足した1987年度の各社の鉄道事業売上高を比べると、JR北海道が726億円、JR四国が306億円。それに引き換えJR九州は1266億円。売上高7000億~1兆5000億円台の本州3社より劣るが、元から三島会社の中で頭一つ抜けていたのは事実だ。とはいえ、この程度の売上高では2000キロメートル超の路線ネットワークは維持しきれない。現にそれまで同社の鉄道事業は赤字続きであった。

三島会社は、事業基盤の弱さから鉄道事業の黒字確保が難しい。このため国鉄分割民営化に際し、本州3社には国鉄長期債務の一部を承継させた一方で、三島会社には長期債務を承継させなかった。同時に三島会社には営業損失を補填できるだけの運用益を生む経営安定基金が設けられた。JR九州の経営安定基金は3877億円。この運用益によって、鉄道事業は赤字でも会社としては黒字経営を維持することができた。

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