出世の法則!ホンダ創業者は愛嬌の塊だった 宗一郎を取材した最後の記者が感じたこと

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これだけで終われば、企業トップのある日の面談にすぎませんが、“中小企業のおやじ”の真骨頂は社長が席を立った直後にありました。本当にスズキの車でやってきたかどうかを確認するため、会長自らが部屋の窓のカーテンをほんの少し開けて、駐車場から出て行く車を確認したそうです。

「本当にうちの車で来たな」

傍らの秘書にそうつぶやくと、そっとカーテンを閉めて、満足げな表情を浮かべたのだそうです。

憎めない人

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日々の仕事に大変厳しいという定評のある鈴木ですが、ただ厳しいだけでは人はついてきません。がみがみと叱る中でも、どこかで相手のことを思いやる姿勢を示さなければ、部下は反発を感じるだけで、「この人のために」という感情が生まれてくるはずはありません。

本田宗一郎や鈴木修を見ていると、相手の気持ちを解きほぐすような愛嬌、お茶目な人間味が、人の上に立つ者には不可欠なのだと思わずにはいられません。

「憎めない人」が、実は成功する経営者の条件なのかもしれません。

岸 宣仁 ジャーナリスト

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きし のぶひと / Nobuhito Kishi

1949年埼玉県生まれ。1973年東京外国語大学卒業後、読売新聞社入社。横浜支局を経て経済部に勤務し、大蔵省、通産省、農水省、経企庁、日銀、証券、経団連機械、重工クラブなどを担当した。1991年、退社し経済ジャーナリストに。日本大学大学院知的財産研究科講師。

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