常磐線復旧は「移転後の街」を活性化するか 相馬と仙台が鉄道で再びつながった

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高架構造となった、新しい坂元駅

平坦な土地に設けられた坂元、山下の両駅付近は、やはり地面のかさ上げが行われた上に建設された高架の構造となった。新・新地駅が旧駅にほぼ隣接するといっていい位置なのに対し、坂元は旧駅から約2キロメートル、山下は約1キロメートル移動している。

坂元も山下も、やはり駅周辺は市街地の造成中だ。新・坂元駅は国道6号線に近接する位置で、津波被害をまぬがれた地域にも近い。駅前ではコンビニと坂元郵便局が営業を始めている。

新・山下駅周辺にはすでに新しい住宅が建ち並び、スーパーも開業していた。ここがいちばん町の建設が進んでいる。JR駅から、さらに山手にある山元町役場の間に位置するエリアも、通勤通学に常磐線を利用することを想定したニュータウンとなった。

復興促進へ鉄道の利便性向上を

移設の上、高架化された坂元駅付近の常磐線の線路

営業再開区間の各駅の利用客数は、震災前から漸減傾向にあった。少子化による高校生の利用減が主な原因と考えられる。私も何度も乗車した震災後の代行バスではさらに減少傾向が顕著で、仙台方面からの列車と接続しても、定員約40人の観光バスタイプ1台で十分運び切れるだけの利用者しかいなかったことが多々あった。

新しい町づくりの方針を見れば、鉄道の利用客増を図り、復興促進につなげようと考えられていることは明らかだ。現在は人口流出が続いているとはいえ、鉄道の利便性向上によって、例えば仙台市のベッドタウンとしての発展を望んでいるようにも思える。相馬-仙台間は、普通列車でも約1時間の距離である。

新旧の時刻表を対照してみればわかるが、営業運転再開時のダイヤは、4往復あった特急を除いて、原ノ町-仙台間の運転本数などは、おおむね震災前のダイヤを踏襲したものとなっている。具体的な利用者増がもくろめない段階ではやむを得ないところだが、やはり何らかの改良が今後、進められることが望まれる。

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