狙われた「羽田」 視界不良の攻防戦

狙われた「羽田」 視界不良の攻防戦

羽田をめぐり、豪空港ファンドが空港ビル会社への出資比率をじわじわと上げている。世界中で空港を買いあさる中、次に照準を合わせたのが日本の玄関口だった。(『週刊東洋経済』10月27日号より)

 10月11日、国土交通省において非公開形式で行われた「今後の空港のあり方に関する研究会」。2009年以降に予定されている成田国際空港の株式上場を見据えた話し合いが中心のはずだった。だが、いつしか話題はオーストラリアの金融機関マッコーリーグループに飛び火。国交省幹部は「非常に注意すべき存在だ」と口にした。

 外資の「羽田上陸」。その存在感は日増しに高まっている。マッコーリーは9月13日、羽田空港のターミナルビルを運営する東証1部上場の日本空港ビルデング(空港ビル)の持ち株比率を12・47%へ引き上げたとする株式大量保有報告書を関東財務局に提出した。  

 空港ビルとマッコーリーとの対峙が始まったのは、最初に大量保有報告書が提出された今年7月27日。その数日前、空港ファンド「マッコーリー・エアポーツ」のマックス・ウィルトン会長から「表敬訪問したい」との連絡が入った。空港ビル関係者は「9・95%の株式を保有したという突然の報告だった。それ以上は何もない」と憤る。ウィルトン会長は、世界の空港運営会社が所属する国際空港評議会のアジア・太平洋地区の議長を務める。普段は接点が多いだけに、唐突な「筆頭株主」宣言に不信感を持ったようだ。  

 その後もマッコーリーから何度も会談の要請を受けたが、「すべての株主に会うわけではない」として保留し続けた。しかし、さらなる買い増しが判明し、10月に入ってから2度目の会談に応じた。来日したウィルトン会長は都内のホテルで、国交省OBの土井勝二副社長に対し、自らが展開する海外の空港事業について説明を行った。それでも両社の溝が埋まる気配はない。  

 マッコーリーグループは、空港や道路、鉄道など公共インフラ投資を得意とする。なかでも空港投資ファンドは本拠地のシドニー空港を皮切りに、欧州の空港を次々買収して勢力を拡大。だが、今年に入ってローマ空港とバーミンガム空港の出資を引き揚げ、新たに照準を合わせたのが羽田空港だった。  
 
 空港ビルは、年間約6600万人と世界で4位の利用者数を誇る羽田空港の「大家」にあたる。ターミナルビルに加えて巨大な駐車場を擁し、空港内には飲食店も多い。国有地のため地代を国に支払うが、航空会社などから独占的に舞い込む「家賃収入」がそれを上回る。「競争が比較的少なく長期的に安定したキャッシュフローが見込める。投資対象として空港セクターへの需要は高まっている」と大手証券は指摘する。  

 実際、海外ではドバイ政府系企業がニュージーランドのオークランド国際空港買収に乗り出し(地元の反対で断念)、スペインの建設会社もイギリスの空港運営会社へ触手を伸ばすなど、空港会社をめぐる動きは活発。海外の空港会社はEBITDAマージン(売上高に対する減価償却前利益の比率)が50%を超すなど、軒並み高収益を誇る。が、当の空港ビルは16%と低く「経営改善の余地が大きい」(外資系証券)。  

 裏返せばマッコーリーにはその潜在的な収益力が魅力だ。「羽田は国内路線の6割を網羅し、市場で優勢な地位にある。ターミナルビル刷新や10年に完成予定の第4滑走路など、インフラ施設の質も非常に高い。商業事業も成長性を感じる」(マッコーリー関係者)と強調する。

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