スズキ「スイフト」の全面改良が早まった理由 スタイル刷新の4代目は16年末に日本で発表

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ヴィッツは、次期型の開発をダイハツが担当するといううわさがある。業界内では「ダイハツサイドのコンパクトカーとのプラットフォームなどのパワートレーン共有化のタイミング調整のため、フルモデルチェンジが先送りになる。その延命策が、今回のマイナーチェンジ」という話も飛び交う。

鳴り物入りで追加されるハイブリッドもアクアのユニットとなるので目新しさは少ない。それでもトヨタの強大な販売力に加えて、ヴィッツは「レンタカースペシャル」と業界内で揶揄されるほど、レンタカー会社への販売ルートが太い。販売台数の統計上において新型スイフトがヴィッツを追い抜くのは非常に難しいが、目新しさとパフォーマンスの進化を得て登場する4代目スイフトとヴィッツの一部改良モデルを比較して購入検討するユーザーもいるだろう。

国内コンパクトカー市場における競争は過熱中

10月に行われた業務提携に向けた検討を開始する旨の記者会見では仲良く笑顔で握手していたが…

今年10月12日に環境や安全、情報技術等の分野での連携強化など、業務提携に向けた検討を開始したトヨタとスズキだが、国内コンパクトカーの市場における競争は過熱している。

11月9日に正式発売されたトヨタ「ルーミー」「タンク」ダイハツ工業「トール」、スバル(富士重工業)「ジャスティ」は、販売好調なスズキ「ソリオ」を強く意識したモデルだ。ソリオのような後部リアスライドドアを採用したトールタイプのMPV(多目的車)スタイルを採用。ダイハツが開発及び生産を行い、トヨタとスバルにOEM(相手先ブランドによる生産)供給することでソリオを完全包囲している。

ソリオ対ルーミー系のバトルは始まったばかり。12月分が両車フルカウントでの初めての販売統計となる

一方のスズキは、11月29日にストロングハイブリッド搭載車をソリオに追加設定。マイルドハイブリッドに続きストロングハイブリッドを追加することで排気量1000ccの3気筒エンジンとターボエンジンモデルをラインナップするルーミー系への対抗意識が見える。

ルーミー系とソリオという同コンセプト車であってもトヨタ車とスズキ車を購入する層は微妙に異なる傾向はある。とはいえ販売現場で話を聞くと、ルーミー系とソリオが競合するケースは一部で見られるようだ。

昨今のスズキは日本国内で軽自動車以外の登録車(普通乗用車)の販売に積極姿勢を見せている。消費者サイドでは「軽自動車メインのメーカー」というイメージがいまも強く、スズキの登録車を「食わず嫌い」してしまう人は意外なほどまだ多いものの、自動車通の間では「スズキのクルマはなかなか出来がよくなってきた」という評価が高まってきている。

対ヴィッツに限らず、4代目スイフトが日本でどう受け入れられるかはスズキの国内登録車販売の今後を占う試金石となりそうだ。

前之橋 三郎 自動車業界ウォッチャー

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まえのはし さぶろう / Saburo Maenohashi

主に販売現場の視点から俯瞰する自動車業界ウォッチャー。

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