北陸新幹線「小浜・京都」案は本当に最善か 工事や建設費で他ルート再浮上の可能性は?

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さらに、京都・新大阪間に設けられている車両基地と新大阪駅との間では車庫を出入りする回送列車も多数走っており、この区間では最も混雑する時間帯には上下とも平均4分おきに列車が運転される。したがって、北陸新幹線の列車が東海道新幹線に直通していく運転方法は現実的ではない。

しかし、米原駅で乗り換えるとなると不便だし、もし東海道新幹線に完全に並行するルートで米原-新大阪間も建設したとすると、実際の線路の長さでさらに107.1キロメートル分の敷設が必要となるために建設延長は約167キロメートルに増え、米原ルートの魅力は一気にしぼんでしまう。

とはいえ、現状では建設費の安さは魅力的であり、また北陸新幹線を介して北陸地方と中京圏との間の移動が便利になる点はほかのルートには見られない。石川県議会はいま挙げた点を考慮して米原ルートを推奨していた。

敦賀-新大阪間の所要時間や運賃・料金は小浜・京都ルートが最も有利だ。B/Cは1.1で米原ルートには劣るものの、1.0以上あれば建設を上回る効果が得られると言われているので合格点を与えられる。小浜・舞鶴・京都ルートは建設費、所要時間、B/Cとすべての面で他の2ルートを上回る点が存在しない。

しかしながら、小浜・京都ルートが採用されたとしても、小浜市と京都市との間はほぼ全区間が山間部であり、長大なトンネルの掘削に難儀することも予想される。実際に、小浜市と京都市との間を結ぶ高速道路は舞鶴若狭自動車道・京都縦貫自動車道と山あいを避けており、まさに小浜・舞鶴・京都ルートそのものだ。今後の地質調査の進展具合では小浜・舞鶴・京都ルートへと変更される可能性も皆無とはいえないだろう。

北陸新幹線は都市間の「最短ルート」ではない

さて、金沢・敦賀・新大阪間が開業の暁には、東京駅と新大阪駅との間を北陸新幹線経由で結ぶ列車の運転が可能となる。もしも東海、東南海、南海地震などが発生して東海道新幹線が不通となった場合、北陸新幹線は東海道新幹線の代替としての役割を果たせるため、可能な限り最短のルートを行くべきだとの意見も根強い。このため、敦賀・新大阪間のルートを決めるにあたっては、距離の長い小浜・舞鶴・京都ルートなど問題外で検討に値しないと批判する人も見受けられる。

もちろん無用な遠回りは避けるべきだが、北陸新幹線は実際のところ、理想どおりの最短ルートでは建設されていない。その例は高崎駅と佐久平駅との間、そして長野駅と富山駅との間で顕著に見られる。

当初、高崎・佐久平間で検討されたルートは軽井沢駅回りではなく、軽井沢駅を通らずに南側を直行するというものであった。地形図をもとに直行ルートの距離を測定すると49キロメートルと、現在の高崎-佐久平間59.4キロメートルと比べて10キロメートルほど短い。

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