新車「C-HR」がこれまでのトヨタ車と違う理由 空白の小型SUVでライバルを追撃

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小型に限らずSUVは今や世界的な人気となっており、いわゆるセダンなどからトレンドがシフトしている。調査会社IHSグローバルによると、世界のSUVは2016年に882万台に達する予定で、この10年間で3倍に拡大している。日本でみても2016年は10年前に比べ2・1倍の60万0270台に急増。同じ期間に全体の新車市場は15%落ち込んでおり、SUVの勢いが際立っている。今や10台に1台以上がSUVという計算だ。

各社とも大径タイヤを使い、押し出しの強いダイナミックスのデザインで力強さを演出、また運転席が高めで視界が広いことも人気だ。欠点としては一般的に、静粛性や走行性能がセダンなどよりも劣り、重量が重くなるため燃費も悪くなるといわれる。ただ、原油安の状況もあり、足下ではいわゆるエコカーよりもデザインなど個性や趣味性の高いSUVを購入する客が増えているのが実態だ。

デザイン性を優先し、後部座席もやや狭めだ(記者撮影)

海外大手も軒並みSUVのラインアップ拡充を急いでいる。プジョー・シトロエン・ジャポンのマーケティング担当者は「SUVは今ではすべての自動車メーカーにとって必要不可欠だ」としたうえで、「SUVは価格よりもデザイン重視で購入する顧客が多く、メーカー側にとっても収益性が高い」と語る。実際、ボディタイプが同じならSUVの価格は15~20%高いというデータもある。

納期は3月初旬から中旬

エコカーや実用性などで強みを発揮してきたトヨタだが、SUV人気のトレンドは十分認識しているはずだ。トヨタは今回、C-HRを国内に4つあるすべての販売チャンネルで発売する。発表会がない代わりに、事前受注やイベントも多く展開している。「たくさん売れなくてもいい」という言葉を額面通りとるわけにはいかない。

「もっといいクルマづくり」を掲げているトヨタの豊田章男社長。「トヨタの車は無難であまり面白くない」というユーザーの声もある中、昨年発売した新型プリウスも、賛否はあったが、攻めのデザインに大きく変更した。クルマづくりをこれまでと変えようとしている。

C―HRの国内での事前受注は2万9000台に達し、納期は3月初旬から中旬になるという。トヨタの新たな挑戦の試金石としてC―HRの担う役割は大きい。
 

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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