戸越銀座駅が「木造」ホームに変身した事情 開業以来90年ぶりのリニューアル

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東京都内でも有数の活気ある商店街として知られる戸越銀座商店街。平日でも1万人以上の買い物客が訪れるといい、山村氏は「ウィークデーは地域の方、土日は外部から来ていただく方が多く、戸越銀座駅も土日の乗降客が相当増えている」と語る。

各地で商店街が苦戦していると言われる中、同商店街が高い人気を保ち続けている理由について、山村氏は「地域密着型であることではないか」という。「私たちが(今回のような)イベントをやると、商店街だけではなく地域の方々に手伝っていただける。いまは商店街は人手が足りず、活動する人が少なくなってきているのが一つの悩みですが、それをカバーしてくれているのが地域とのおつきあいです」と同氏は語る。

今回のリニューアルの経緯を活かし、今後は駅や東急とのコラボレーションも進むのだろうか。「そうなっていくと思います」と山村氏。東急の平江氏も「今回の竣工だけでなく、今後も戸越銀座駅は街と一緒にいろいろやっていきたい」と語る。さらに、今回を皮切りに池上線のほかの駅についてもリニューアルなどを行い「池上線全体をブランディングできれば」との考えもあるという。

身近な「駅」への地元の想いは大きい

利用者による旧駅の思い出や戸越銀座への想いを刻んだボード

新しくなった戸越銀座駅のホームには、旧駅の思い出や駅との関わりを記した利用者のメッセージを刻んだボードが設置されている。「戸越銀座大好き!」「木のぬくもりあふれる良い駅になってください」「これからもふみきりの音のするこの街で楽しくくらしていきます」・・・・・・。駅を利用する人々の寄せた言葉は、駅と街への愛着に溢れている。

駅のもっとも重要な機能は安全に電車に乗り降りできることなのはもちろんだが、「地域の顔」としての役割も大きい。しかし、都市部では利用者数の増加や高架化などに伴うリニューアルで、結果としてかつての駅に利用者が抱いていた愛着や懐かしさなどが失われてしまう例も少なくはない。

そんな中で、これまでなかった地元との連携に改めて取り組むなど、利用者の駅への想いを活かした機能一辺倒ではない改装は、地域を盛り上げることはもちろん、鉄道側にとっても沿線住民へ駅や路線への愛着を持ってもらい「選ばれる沿線」であり続けるためにも意義のあることだろう。駅のデザインや雰囲気が、街や路線のイメージに与える影響は無視できない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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