「過去・現在の隠れた事実を娯楽映画の中で描きたい」−−映画監督・プロデューサー ジョージ・ルーカス

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--スター・ウォーズのキャラクタービジネスの市場規模は100億ドルといわれていますが、インディは?

スター・ウォーズはああいう性質の映画であり、キャラクターもいっぱい出てくるから、いろいろな展開ができる。でもインディは登場するキャラクターが少なく、過去の3作品合わせてもTシャツやフィギュア程度しかやっていません。今回は大きな展開をしていますが、スター・ウォーズに比べたらずっと少ない。

--スピルバーグ監督にあって自分にないもの、あるいは自分のほうが優れていると思うものは?

私はアイデアを出す力は優れていると自分でも認識している。インディもスター・ウォーズも、そのアイデアは私が生み出したものだ。アイデアが出たらストーリーも自分で作って、脚本も書く。監督業はまあまあできるかな。一方でスティーブン(スピルバーグ)は監督としては世界の誰よりも優れている。インディのシリーズでは監督業は彼に任せているが、そのほうがずっと楽です。しかもよいものができる(笑)。

あと、私はインディペンデントな立場が好きなので、小さいけど自分の会社を持っており、そこですべてを生み出す。スティーブンも会社を持っているが、それはハリウッドのスタジオと関係している会社なので、彼はハリウッドのシステムに組み込まれて、その中で映画を撮っている。彼はシステムの中にいて、私は外にいる。それも違いかな。

--お二人の役割分担は?

具体的には私がアイデアを出してストーリーを作る。そしてスティーブンからコメントをもらう。そのコメントを基にストーリーを書き換える。その後で脚本家を雇って私の気持ちを伝える。そしてできた脚本をスティーブンに見せる。彼はいろいろと意見を言うので、どちらかが歩み寄るか、妥協案を考える。その後で、私はすべてのスタッフ集めをして、スティーブンにすべて委ねる。そこから先は彼の仕事。監督は王様だから、あらゆる決定権は監督にある。私が口出しするということはあまりない。でも僕が監督だったら、自分のやりたいようにやる。

--インディの5作目は?

インディアナ・ジョーンズというキャラクターがいれば成立するので、アイデア次第でどんどん続けられる。ただ問題が二つある。第一によいストーリーを作れるか。第二に私がやりたいと思っても、スティーブンと主役のハリソン・フォードのスケジュールが合うか。3作目と4作目の間が開いてしまったのは、スター・ウォーズ新3部作に10年かかってしまったこともあるからね。

--現在のように世界が混乱している中で、映画界の果たすべき役割とは何でしょうか。

あなたには何十年も前に見た映画にもかかわらず、今でも目に焼き付いているシーンがあるでしょう。映画とは、人生にとても大きな影響を与えるメディアです。そして映画の使命とはストーリーを語ること。過去に起きた、あるいは現在進行している戦争、宗教対立、環境破壊といった事実について、外側からはうかがい知れない隠された真実を見せる。それを人間のドラマとして語る。それがフィクションを作っている映画人の使命です。
(大坂直樹 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

George Lucas
1944年生まれ。南カリフォルニア大学卒業後、映画業界入り。「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」シリーズの生みの親。特殊効果スタジオILMの設立、高水準の音響システムTHXの開発など映画業界への技術的な貢献も大きい。

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