「さほど好きでない」相手と結婚する人の本音 「運命の人」は価値観によってさまざま

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浩之さんは史恵さんの他にも「恋人」がいたのかもしれない。だからこそ、このような余裕を持てたのだ。一方の史恵さんも実家暮らしで自由に遊び回れる生活を手放せなかった。

彼の第一印象は「さえない男」

2年前の夏に史恵さんのやや奔放な独身生活を一変させる出来事が起こる。きっかけは40代を中心とする男女が適当に誘い合って集まったゆるい合コンだった。そこで1歳年上の伸明さん(仮名)と出会ったのだ。現在の夫である彼の第一印象は「さえない男」。

「2次会に向かう道すがら、彼は誰とも話さずにトボトボと歩いていたんです。かわいそうなので声をかけたら、なんと同じ町内で生まれ育ったことがわかりました。親同士も知り合いだったんです。小さい頃によく遊んでいた空き地まで同じ。今までにきっとどこかで顔を合わせていたはずです」

飲み会が開かれたのは大阪市内の繁華街であり、史恵さんの地元までは快速電車で40分ほどかかる。そこで親同士が知り合いの異性と出会ったら運命を感じるかもしれない。

ただし、史恵さんは浩之さんをはじめとするスマートな男性たちと遊び慣れていた。大企業社員だけど「さえない」雰囲気の伸明さんにはまったく興味がなかったと振り返る。

「その飲み会に一緒に行った女友だちと3人で飲むようになりました。彼は長男ではなく、両親は土地持ちで、大企業に勤めていて、結婚歴はありません。条件だけはいいので、友だちが結婚すればいいなと思っていました。彼は、数百円のうどんすら割り勘にしようとする人で、あり得ないなと。『今までどうしてたんや。そりゃモテないよアンタ』とずけずけ言っていましたよ」

おっとりした性格の伸明さんは、史恵さんのように活発で社交的な女性が好きなのだろう。次第に史恵さんと2人きりで会いたがるようになった。なお、史恵さんの友だちもおっとりした女性であり、「私たち2人だけだと会話が弾まない。付き合うのは無理」と早々に戦線離脱を宣言。史恵さんと伸明さんは自然と男女関係になった。

お互いに結婚するつもりはなかった。史恵さんは独身のままで生きていく準備を進めていたし、伸明さんのほうは若い女性と結婚して子どもをたくさん作る願望を持っていたからだ。

「私と会う4年前まで、20歳年下の女性と付き合ったそうです。でも、音頭取りも段取りもできない彼が若い女性を引っ張っていけるわけはありません」

事態は昨年の春に動いた。伸明さんが一人暮らしをしている部屋で2人でくつろいでいたところ、伸明さんの母親が訪ねてきたのだ。伸明さんの家族は極めて仲が良く、親子で夕食をしようと気軽に誘いに来たのである。

とっさに史恵さんの靴を隠し、玄関先で母親を追い返した伸明さん。史恵さんは「お母さんがかわいそう。行ってあげなよ。私はそろそろ帰るから」と勧めた。何を思ったのか伸明さんは史恵さんに「一緒に行こう」と提案。しきりに遠慮する史恵さんを押し切り、彼女を両親に引き合わせた。

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