デンソー「自動運転技術」はこうして生まれる めったに公開されないテストセンターの内部

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これに対して、デンソーは今年1月に「ADAS(先進運転支援システム)推進部」を設立。社内に点在していた自動運転関連で、特にソフトの技術者を一カ所に集めた。ADAS推進部の松ヶ谷部長は「ドイツ勢が攻めてきているが、一番のお客さん(トヨタ)には私たちのモノが一番良い品質であるとは理解してもらっている。今回はドイツのモノも使って見てください、どうでしたかというレベルだ」と強気だ。

敵は同業ばかりではない。電機業界も攻めてきている。パナソニックや日立製作所、日本電産など大手メーカーはスマホなどより安定している自動車市場を虎視眈々と狙っている。

こうした動きに、デンソーの松ヶ谷部長は「非常に驚異になる。時間間隔やスピード、培った技術も違う」と認める一方、今回公開したカメラはソニーと提携。東芝とも画像認識システム向けの人工知能技術の共同開発で合意した。

さらに今年度内にもカーナビ大手の富士通テンへの出資比率を10%から51%に引き上げて子会社化する予定だ。これも将来の自動運転技術の開発強化を見据えたもので、矢継ぎ早に異業種との提携を進めている。

テストセンターの公開は自信の現れ

これまで「技術力のデンソー」としての自負が強く、トヨタと同じく自前主義が強い面があったが、新たな分野では異業種との提携も駆使しながら競争に挑む構えだ。デンソーの有馬浩二社長はかねて「自前でできない技術はたくさんある。そういうところでは積極的に協業していきたい」と話している。

情報安全分野の2015年度の売上高は6893億円で前年比10%増と、全カテゴリーで最も高い伸び率を示しており、2020年度には1兆円に引き上げる考えだ。すでに200万キロの走行データがあるとし、普段見せることがないテストセンターをあえて公開したのも自信の現れといえる。加藤良文常務役員は「予防安全技術は今後5年以内に新車のかなりの部分に搭載されていく。必要な投資はしていく。十分効果がある」とした。

ただ今後は道路の見えない先を読んだり、人間の複雑な心理に基づく行動予測も必要となるなど、解決すべき課題は一段と複雑さを増していく。デンソーの真価が問われるのはまさにこれからだ。
 

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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