燃油高で休漁船続出 マグロ危機の深層

今夏から、各国のマグロはえ縄漁船が相次いで休漁する。7月に台湾船の2割弱となる約70隻を皮切りに、日本でも最低2割の75隻が休漁に入る。日本かつお・まぐろ漁業協同組合の石川賢廣組合長は「漁船に使用する燃油の価格が2年前から倍増した」と休漁の理由を説明する。遠洋マグロ漁船のコストに占める燃油費は15~20%が採算ラインとされる。ところが、今年5月時点の試算では、それが約43%まで急上昇した。「1日当たり10万円の赤字が出る計算。現在の魚価で漁を続ければ、漁業者は潰れてしまう」(石川組合長)と悲鳴を上げる。 

水産庁の外郭団体である「責任あるまぐろ漁業推進機構」には世界のマグロはえ縄漁船の95%に相当する1174隻が登録している。同機構によると、「すでに韓国では20隻が帰港し、中国も40隻が休漁を検討中。今年は世界で400隻が休漁するかもしれない」(原田雄一郎専務理事)と予測する。

燃油高でも安い魚価 漁獲量も減って三重苦

2年前にも、マグロが食べられなくなるといった報道が相次いだ。このときは、資源量が激減している高価なミナミマグロについて漁獲枠を大幅削減することが決められた。しかし、今回は漁自体がストップする。国内流通量の9割近くを占めるキハダマグロやメバチマグロなどの供給が減るおそれがある。回転ずしチェーンや量販店で扱う大衆マグロが影響を受ける可能性があるのだ。

マグロ水揚げ高で国内2位を誇る神奈川県三崎港。遠洋マグロはえ縄漁船を7隻保有する「事代漁業」の寺本紀久社長は「オイルショックのときより厳しい」と表情を曇らせる。同社は太平洋でキハダを中心に獲っており、航海中は一度も寄港せず給油船に頼る。この海上補給代が、キロリットル当たり12万円と2年前に比べ倍増した。「8万円のときから赤字が続く」と寺本社長はため息をつく。しかも漁獲量は減少傾向。以前は1年未満だった航海期間も、現在は最長15カ月ほどに延びている。

漁獲量が減った背景には、長年の濫獲や、世界的な水産資源の需要拡大がある。健康意識の高まりで欧州や中国などで水産物需要は拡大中だ。ツナ缶も人気がある。マグロに狙いを定めるはえ縄漁と異なり、欧米諸国はさまざまな魚種を一網打尽に獲る巻き網漁が主力。中にはヘリコプター搭載の巨大船もある。巻き網漁で小型マグロまで獲られてしまうと、はえ縄漁の取り分はおのずと減ってしまう。「巻き網漁が盛んな東部太平洋では、メバチの減少が顕著」(水産庁)と特に日本はこの問題を重要視している。

はえ縄漁は何千本もの釣り針を垂らし、魚を傷つけないで獲る日本伝統の漁法だ。世界のはえ縄マグロ生産量は60万トン。うち8割は日本で消費される。しかし右肩上がりの燃油高を尻目に、流通量の4割を占める冷凍キハダの相場は、安い台湾産の輸入などで、頭打ちだ。水産会社は高値で買い取る欧州への輸出を積極化しているが、数量は限定的。マグロはえ縄漁船は、燃油高と漁獲量の減少、そして安い魚価という三重苦にあえいでいる。


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