松下幸之助「宇宙は人間のためにある」の真意 経営の神様は、人間を「偉大な存在」と考えた

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それなりの自覚と責任をもって、みずからを律し、自然万物に相対していかねばならん
江口克彦氏の『経営秘伝――ある経営者から聞いた言葉』。松下電器産業(現パナソニック)の創業者である松下幸之助の語り口そのままに軽妙な大阪弁で経営の奥義について語った著書で、1992年の刊行後、20万部を売り上げるヒットになった。本連載は、この『経営秘伝』に加筆をしたもの。「経営の神様」が問わず語りに語るキーワードは、多くのビジネスパーソンにとって参考になるに違いない。

人間が一番偉大な存在であると自覚すること

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とくに人間は偉大な存在やな。いわば、この宇宙においては王者や。こう言うと、それは不遜やと、傲慢やと。そういう人も多いと思うけど、しかし、わしは理屈はようわからんけどね、現実の姿を見れば、明らかに、そういうことが言えるんと違うか。この宇宙のなかで、人間が一番偉大な存在であり、その立場にあると。

そやろ。実際、きみ、人間が人間を殺したりすると罪になり、場合によっては死刑になるけど、犬が人間に殺されたり、猫が交通事故に遭ったとしても、なんも罪にならんのはなぜなのか。人間のために木を植え、木を伐っても別に罰せられんのはなぜか。犬や猫、木の立場からすれば、それはけしからんということになる。それでは犬や猫から、人間は罰せられるかというと、そういうことは、ないやろ。

人間は牛を食べたり、豚を食べたりする。どうしてそういうことが許されておるのかというと、人間がこの宇宙のなかで王者として存在し、君臨しとるからや。いわば、この宇宙に存在するすべてのものは、人間の平和、幸福、繁栄のために、そしてそれらを実現するために存在しておると考えられないか、ということやね。

わしが言うておるのは、たびたび言うけど、理屈やない。静かに実際の現象を素直に見て考えれば、そういう結論になるやろ。

そうやない。人間もほかの存在と同じやと。ほかの動物と変わりはないと。植物と変わりはないと。そういうことを言う人もいるかも知れんというより、そういうふうに考えておる人が多いと思う。けど、そういうことなら、人間は他の動物を殺しても罪にならんのやから、人間を殺してもけしからんということにはならんのやないかな。

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