松下幸之助｢宇宙は人間のためにある｣の真意 経営の神様は､人間を｢偉大な存在｣と考えた

戦争もいいと。人と人が殺しあってもいいと。そういうことになるわな。そやろ。しかし、そうではないわな。理屈はともかく、実際は。それはちゃんと人間がいちばん偉大な存在だということを認識しておるわけや。
人間は偉大ではないと。罪深い、また小さな存在だと。そういう、つまらん存在を偉大であるということはおかしいと。間違っておると。そう言うて怒る人もおるやろうけど、わしから言わせれば、そういうふうに考えるのは、今日では、貧困な考え方であると思うな。

そういうことを考えておるから公害をだしたり、自然を破壊したり、戦争したりするんやな。

なぜなら、小さい存在、卑小な存在で、つまらん人間ならば、少々のことを、言い換えれば、自然を破壊するようなことをしても、無謀なことをやっても、それはこの宇宙が、自然がなんとかしてくれる。小さな存在である人間が汚水を流しても、大きな自然は、海は浄化してくれると思い込む。

そんな考え方を持ち続けておる限り、この地球は、この宇宙は、ズンズンと破滅の道を進んで行くことになる。やがて人間はみずからの手で、自分の首を絞めるようになるやろう。

大事なことは、いま人間がお互いに、人間は偉大な存在なんだ。自然の理法に従えば、万物を支配し、宇宙に君臨することができるほどの、大きな力を持っておるんだということを、強く自覚することやね。

地球を破壊してしまいかねないことを自覚すべき

もしそういう人間に対する考え方を人類一人ひとりが持つようになれば、戦争もなくなるし、地球汚染や環境破壊ということもなくなる。

そやろ。きみ、人間はとてつもない力を持っておると。そういうことになれば、みずからの行動がひょっとすると、この宇宙を、この地球を破壊してしまいかねないようなことをするかもしれない。大きな存在の人間が自然に向かってとる行動は、ひょっとすれば、海を汚し、森林を破壊し、空気を汚染してしまうかもしれない。自然の理法に従っていないと、たいへんなことをしてしまう。当然思いはそこにいたるわけや。

ああ、人間は偉大な存在なんだ。そうとう大きな力をもっておるのだから、みずからの行動もほどほどにせんといかん。それに人間は万物の王者であるから、それなりの自覚と責任をもって、みずからを律し、自然万物に相対していかねばならん。王者としての責任を果たさんといかんという気分になる。それが人情やな。

それを人間はつまらん存在だ、罪深い存在だと言われつつ、それで責任ある行動をとれと。そういうことは、言われるほうがわりにあわんわな。きみかて、会社で一社員として、社長の責任を果たせと言われても困るわな。それなら私を社長にしてくださいと。

人間がつまらん存在だとするのは、わしからすれば、人間は無責任でいい、ほかの動物に対しても、植物に対しても、なんも責任を持たなくていい。どんどん自然を破壊し、公害や汚染をだすようにと、勧めておるようなもんやな。