「在宅死」を現役医師が必ずしも勧めない理由

家族の疲弊を考えれば病院死も選択肢に入る

理想の看取りとはどのようなものでしょうか
デビュー作『サイレント・ブレス』(幻冬舎)で終末期医療のあり方を問いかけた現役医師で作家の南杏子さんと、精神科医で、自らも父親を介護し、在宅で看取った経験を持つ香山リカさんの対談後編。

 

前編:「治療をしない医療」を医療と呼んでいいのか

医師として「最期は在宅で」と勧められない理由

南 杏子(以下、南):今回の私の『サイレント・ブレス』は、病院ではなく在宅で亡くなっていく方々の最期を書いたのですが、香山先生も、お父様を在宅で看取られていますよね。でも、そのご経験から介護や看取りのあり方について考察された『看取りの作法』(祥伝社新書)では、在宅介護は「基本的には『医療の拒否、医療の否定』にもつながる」ので、医師としては「病院に行かずに在宅で」とは言えない、と書かれています。

香山 リカ(以下、香山):私の父の場合は、命を終えるぎりぎりのタイミングで病院から連れ帰り、最後の半日あまりを自宅で過ごしただけなので、「在宅で看取りました」と胸を張って言えるようなものではありませんが、私も母もそうしてよかったと、心から思っています。

ただ、個人としてその選択に悔いはないのですが、医師としてはどうしても、「これからは積極的に在宅看取りを勧める活動をしよう」という気になれないんです。

私の専門の精神医療と終末期医療とは事情が違いますが、それでも、自分が診ている患者さんが「病院にはもう来ません。薬もけっこうです」とおっしゃったら、「そんなことは言わずに通ってください。薬もきちんと飲んでください」と、医療を強く勧めると思うので。

それともうひとつ。理由としてはこちらのほうが大きいのですが、もし「病院死」よりも「在宅死」のほうが正しい、好ましいとしても、家族にとっては負担が大きい。誰もがそれを実行できるわけではないと思うからなんです。

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