今さら聞けない!「ドローン」は何が凄いのか ラジコンとの「3つの決定的な違い」とは

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ドローンの最大手メーカーである中国のDJIは障害物回避センサーを搭載したPhantom4を発表した。先述のインテルも障害物回避システムを搭載したドローンを開発し、障害物を避けながら森林を飛行するドローンの動画を紹介するなど、各社が機体安定性向上に向けた技術開発に注力している。これら企業ベースの取り組みに加え、特に市街地での運用については、いつ、だれが、どこで、なんのためにドローンを飛ばしているのかを管理する仕組みを検討する必要があるだろう。

データの活用がカギになる

また、ドローンの機体性能の話題の陰に隠れがちだが、ドローンが取り扱う膨大なデータを活用するための仕組みも重要である。たとえば、ドローンが橋梁の高精細な写真を取得しても、自治体が橋梁を管理する「橋梁台帳」でデータの管理・分析ができなければ、橋梁の高精彩な「記念写真」がパソコンの奥深くに眠るだけとなってしまう。

先ほど紹介した、「空飛ぶセンサー」のビジネスモデルも、ドローンが取得した画像データをすばやく3次元データに加工するシステムや、ドローンが映す動画をオンタイムで監視するための通信環境などがなければ成り立たない。ドローンを安全に飛ばすのはもちろん重要だが、用途に合わせたITインフラがなければ、宝の持ち腐れとなるということにも留意が必要である。

空撮によく用いられるホビー用ドローンの世界市場を見ると、中国のDJI、フランスのパロット、アメリカの3DRなど海外企業のシェアが高く、日本勢は出遅れていると言わざるをえない。しかし、これまで紹介してきた商業用ドローンについては、過酷な運用環境に耐えられる機体や、耐久性の高いバッテリー、高精度のセンサーなど、日本に優位性がある要素技術が多い。

日本には、過疎化に悩む自治体や、老朽化した橋・トンネルなど、ドローンが活躍できるフィールドが数多く存在する。さらに、2017年度以降、政府がロボットの性能を試験するための大掛かりなテストフィールドを福島に整備する計画がある。技術試験や運用実証のための体制が整えられつつある日本で、ドローンが今後どのように発展するのか注目したい。

名武 大智 野村総合研究所コンサルタント

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なたけ たいち / Taichi Natake

1989年奈良県生まれ。2014年米国デューク大学大学院卒業。同年10月野村総合研究所入社。職歴 専門は情報通信・精密機械・環境分野における市場環境分析、事業戦略および国内外の政策動向調査。ドローンに関しては、国内外メーカーの最新動向に加え、欧米で活発に議論されている規制や、国際標準のあり方について調査・研究を行う。

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