ソフトバンクショップ、ゼロ円禁止で窮地に ワイモバイルを除くと大幅減、厳しい代理店

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すでにスマホケースをはじめとするアクセサリー販売を増やすなどの自助努力はしているが、本格的に苦境を脱するにはどれも力不足だ。

野村総合研究所の北俊一・上席コンサルタントは、「携帯会社は代理店に委託している説明業務の手数料をもっと払うべきだ」と主張する。

根拠の一つは接客の長時間化だ。5月の電気通信事業法改正によって、代理店が顧客に確認しなければならない契約内容は格段に増えた。動画配信や雑誌読み放題サービスなど、新たに説明が必要なコンテンツも増える一方だ。「平均説明時間はガラケー時代の60分から180分と3倍になった。だが、手数料は同じか逆に減っている」(北氏)。

体質転換を進めることは茨の道

手間も時間も増えているのだから、代理店にその委託分の手数料を払えというわけだ。これはドコモやKDDIにも当てはまるが、特に販売が苦しい状況にあるソフトバンクにとって急務といえる。

全国携帯電話販売代理店協会も「あんしんショップ認定制度」で無理な販売からの体質転換を図る(撮影:梅谷秀司)

実際、携帯会社は代理店手数料や奨励金の減少、端末の卸価格引き上げなどで、各社とも16年4~9月期は空前の好決算となった。手数料を増やす余裕は十分にある。

ただし、代理店側も携帯会社が手数料を増やすのを待っているだけでは、状況の好転は望めない。

スマホの普及が進んだ今、価格訴求で販売を伸ばす体質からの転換は急務だ。そのためには、移転増床や改装によって魅力のある売り場を作るほか、従業員を再教育し顧客満足度を高めるなど、一朝一夕にはできない地道な取り組みが必要だ。

すでに、代理店の業界団体である全国携帯電話販売代理店協会(全携協)は、安心して契約・相談できる店を示す「あんしんショップ認定制度」を10月から開始している。この認定を申請し、接客の質の高さをアピールしようとする代理店も少なくない。

業界はこれまで実質ゼロ円の携帯会社の施策に頼ってきただけに体質転換を進めることは茨の道。苦境を機に自らを変える覚悟が求められている。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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