スクープ、セブン鈴木康弘氏が取締役退任へ 敏文氏の二男、オムニ戦略の旗振り役だった

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康弘氏は以前、東洋経済のインタビューに対し、「2018年度には取り扱いアイテムを600万品目まで引き上げ、年間1兆円の売り上げを目指す」と高らかに宣言。「アマゾンのようなネットショッピングを今さらやろうという考えはない。われわれのベースはセブン-イレブンに代表されるリアルの小売業。全国1万8000店、40万人の販売員(当時)を媒介としてネットにつながる」とオムニチャネル構想を熱く語っていた。

2015年には康弘氏がセブン&アイの取締役に就任した。このときは、鈴木前会長の世襲人事ではないかと推測された。が、鈴木前会長は今年2月の東洋経済のインタビューに対し、「僕が入れ知恵したって、そんなもの続くわけがない。そうすると、かえって本人にも気の毒。親が一生懸命やって引き回す場合もあるが、僕は絶対にそう言うことはしない」と世襲人事を全面的に否定した。

そんな鈴木前会長は、自身が提案した人事案が否決されたことで4月にトップ退任を電撃発表した。後ろ盾を失った康弘氏の去就も注目されたが、その時点ではセブン&アイの取締役にとどまった。

一方で康弘氏は5月下旬にオムニチャネルの旗振り役だったセブン&アイ・ネットメディアの社長を退任している。「中間持株会社で業容が多岐にわたるネットメディア社長から、オムニチャネルの土台となるシステム開発に注力してもらう」(セブン&アイ広報)のが、退任の理由だった。ただ、オムニチャネル関連の売り上げは2015年度で910億円にとどまっており、苦戦は明らかだった。

創業家の伊藤順朗氏は昇格

10月、セブン&アイは新体制になって初めての中期経営計画を発表した。その際に井阪社長は「これまでEC(電子商取引)はシステムの視点でやってきたことが失敗の要因。今後は顧客視点で全面的にやり方を変える」と述べていた。それは、康弘氏が進めてきたオムニチャネル戦略を全面的に転換することを宣言したことに等しいものだった。

12月7日にはグループの創業者・伊藤雅俊氏(現名誉会長)の二男、順朗氏が執行役員から常務執行役員に昇格する人事が発表された。新設する経営推進室でグループのガバナンス体制の構築を担う。「中期経営計画も(伊藤氏と)一緒に作った。これを推進し、リーダーシップをとってやってもらうための人事だ」(井阪社長)。

今年は康弘氏がセブン&アイグループに入って丸10年。創業家である伊藤家の存在感が高まる一方で、グループの舵取りを担ってきた鈴木親子が名実ともにグループの表舞台から去っていこうとしている。
 

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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