「カジノ企業」は、どうやって稼いでいるのか 米国の大手「ラスベガス・サンズ」を徹底分析

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したがって、Rolling Chip Volumeは高額掛け金を支払う客が賭けた金額の総額ということになる。払い戻しは通常のチップで、手元に残ったチップで換金する。その代わりに、VIPには豪華なプレイルームの使用や宿泊費の割引などさまざまな特典が付与される。ジャンケットと呼ばれる人が付き添い、車の手配業務などをこなしてくれる優遇ぶりだ。

つまり、掛け金は高額になるけれど特典を与えるよ、という仕組みだ。

キャッシュバックサービスの一種でコンプと呼んでいるカジノもある。ここで冒頭に示した数字が登場する。3.08%というのは、最終的な運営者側の取り分の割合だ。同社の場合は3%程度に設定している。それに対して、一般客は24.5%。VIPに対しては還元率を高くするが、大枚を払ってくれる客数を増やすことで儲けている、という図式を示す。

言い換えれば、大金を使う客を気持ちよくさせる、というのがカジノビジネス成功の秘訣ということになる。

順風満帆かといえばそうではない

『米国会社四季報』(東洋経済新報社)。米国の企業情報を見やすくまとめて掲載。業績・財務情報はもちろん、連続増配やIoTなどの投資テーマ、展開ブランド名、ライバル企業など企業をつかみやすくする付随情報も満載。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ただし、カジノが順風満帆かといえばそうではない。中国の景気鈍化に加えて、最大部門マカオの主要な顧客である中国の富裕層からの収入が、習金平体制の贈収賄の規制強化により激減。2015年は前期比20%超の大幅減収となった。そこで、力を入れ出したのが一般客の開拓だ。

こういった戦略の見直しが功を奏し、顧客数の下げ止まりや飲食の増収により、足元では業績が底打ちの兆しを見せている。ここからは勝手な推測だが、最初は少ない掛け金で遊んでいるうちに、さらなる快楽を求めて大きく張りたくなるのが人の常だ。まずは一般客層を開拓してから、特典の魅力を活用し、高単価のVIP層に誘導する、というのが次の一手になることは容易に想像できる。

法案成立によって、日本にカジノが誘致される方向になれば、ラスベガス・サンズをはじめとする米国カジノ企業が、日本進出の機会を伺うことも予想される。

山谷 明良 東洋経済データ事業局

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やまや あきら / Akira Yamaya

2005年、東洋経済新報社入社。編集局で『会社四季報』『週刊東洋経済』の記者、データ事業局で『財務情報』『大株主』『日本の企業グループ』のデータ編集を経て、『米国会社四季報』編集長を務めた。

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