トランプ相場で市場は無防備になっている 「イタリア」通過後、「思わぬ反撃」の可能性も

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イタリアの国民投票の結果を受け、レンツィ首相が辞任した。これは織り込み済み。ただ今後「無敵のトランプ相場」が思わぬ反撃をくらう可能性も(写真:LaPresse/アフロ)

イタリアのレンツィ首相が、国民投票の結果を受け辞意を表明、辞任した。英国のEU離脱や、米国大統領選などの激震を経験した世界の市場には、同首相の辞任は織り込み済みで、些末なニュースでしかなかったようだ。

オーストリアの大統領選挙も無難な結果になったことで、ニューヨークダウは5日、6日、7日と連日史上最高値を更新した。市場の一部には「レンツィ首相が辞任を表明すればイタリアの政治が不安定化し、銀行の不良債権問題が広がる」という懸念もあったが、市場は無視した格好だ。

「投資家のよりどころ」が崩れなかった安心感

しかし、市場が今回の2つの選挙に関して抱いていた懸念は、実は欧州の政治的混乱そのもの以外のところにあったともいえる。市場が2つの選挙を波乱なく乗り切れたのは、結果が「事前の世論調査通りだったから」である。

英国の国民投票では事前世論調査ではきわどかったとはいえ「EU残留派」がおおむね優勢だったし、米国大統領選挙でも主要な世論調査ではやはりクリントン候補が優勢であった。しかし、結果は世論調査とは異なるものだった。こうした世論調査と異なった結果は、世論調査を信じて投資してきた投資家を混乱させるものとなった。

こうした極めて重要な政治イベントで世論調査結果と異なる結果が出たことは、これまで投資家が拠り所にしてきたものが崩れかけたことを意味する。逆に今回、2つの選挙結果が事前予想通りだったことは、投資家に安心感を与えた。

この「事前予想通り」の好影響は、実は今回だけにとどまらない。来たる2017年はオランダ総選挙(3月)、フランス大統領選挙(4月)、ドイツ連邦議会選挙(9月)が予定され、欧州は「政治の年」を迎える。その前に曲がりなりにも世論調査に対する信頼を繋ぎ止められたことは、市場に必要以上の不安を与えずに済んだという点で、好材料だった。

レンツィ首相が辞任に追い込まれたことでイタリア政治の不安定化による金融システム不安の拡大を懸念する声も根強く残っている。しかし、かつて「おはよう、今日の総理は誰?」というジョークが流行ったほど短命内閣が続いたイタリアの政治不安を、金融市場が今回以上不安視することはしばらくの間ないはずだ。この点では、事前予想通りだったレンツィ首相の敗北は、金融市場の救世主になったといえるかもしれない。

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