実は57万人もいる「401k難民」とは何なのか 「個人型DC」を正確に知るための基礎知識

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日本の確定拠出年金は、米国の内国歳入法401条(k)項を参考として制度設計されているため、日本版401kとも呼ばれている。また、「確定拠出」というのは、おカネを出す(積み立てる)金額のみ確定しており、将来の受取額は不確定であることを意味する。一方で、将来の受取額を確定している企業年金のような仕組みを、「確定給付」と言う。

また、日本の確定拠出年金は、個人が自ら選んで加入する「個人型」と、勤め先が退職給付制度のひとつとして導入する「企業型」に大別することができる。

57万人も発生している「401k難民」

現在、個人型DCに加入できるのは、「自営業者」と「企業年金制度の無いサラリーマン」の2者。このうち後者の加入経緯をみると、自ら新規加入してくる者より、転職・退職に伴い勤務先の企業型DCの資産を個人型DCに移してくる者(移換加入者)が多数を占めている。転職先に企業型DCが無い場合は、個人型DCに加入することにより、掛金拠出あるいは資産運用を継続する。

企業型DCから個人型DCへ資産を移換するためには、加入者自身が手続きを行わなければならない。しかし、驚くべきことに移換対象者の多くが個人型DCへの移換手続きを行っていないという実態がある。移換手続きを行わず約半年放置していると、DC資産は個人型DCの運営母体である、国民年金基金連合会(国基連)に自動的に移換されてしまう。これを俗に「自動移換」という。

なぜ、自動移換されるまで手続きを放置してしまうのだろうか。その理由として、「DC資産の中途引出しの要件が厳しい」「移換手続が難しくて煩わしい」「DC資産が少額だから関心が無い」などが挙げられている。中には、意図的に放置している人もいるようだ。しかし、これらの理由はあくまで”公式”のもの。自動移換者の多くは、「移換手続きが必要であることすら知らない」のが実態だ。

意図せず、いつのまにかDC資産が自動移換されてしまう人のことを、業界では俗に「401k難民」とも呼んでいる。この「難民」の数だが、2016年3月末時点で56.7万人、資産額では約800億円を超えている。なお、朝日新聞の調査では、現在その資産額が1400億円を超えるとも言われている。正規の加入者数(25.8万人)および運用指図者数(47.0万人)を凌駕する規模に達している。いわば、難民が多数派を形成している状況だ。

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