アコーディアvsレノ、5年越しの争いに終止符 USJ、コメダを買ったMBKと組み上場廃止へ

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レノが筆頭株主に躍り出てから1年2か月後の2014年3月、アコーディアはアセットライト化と、450億円規模の大規模な自己株取得を実施する意向であることを公表する。

アセットライトとは、アコーディアが保有するゴルフコースを証券化してファンドを組成、シンガポールの証券市場で上場するというもの。ゴルフ場を保有せず、運営受託フィーで稼ぐビジネスモデルへの転換である。資産規模が縮小する分、ROA(総資産利益率)を引き上げ、資金効率を高めることが可能になる。

ゴルフ場の流動化という施策

"アコーディアの天皇"の異名をとった竹生道巨・元社長(2011年、撮影:尾形文繁)

ファンドを組成してゴルフ場資産をそこへ移し、運営受託フィーで稼ぐ形にする、という基本的な構想自体は、村上氏が大株主として登場する以前の2012年12月に、PGMへの対抗措置として公表した新中期計画の中でも謳われている。

ただ、その段階では、大手不動産デベロッパーが、自社の開発物件の出口としてJ-REITを活用するのと同じようなイメージだった。

それが、J-REITよりも遙かに複雑な、シンガポールの市場まで使うスキームであることや、自己株取得による株主還元も予定していることをアコーディアが公表したのは2013年10月。さらに、自己株取得が450億円もの大規模なものであることは、2014年3月になって公表している。

レノは2013年10月の発表後の11月~12月にかけての時期、そして2014年3月の発表後の4月~7月にかけて、市場でアコーディア株の追加買収を行い、保有割合を33.2%に引き上げている。

結果、レノ側は自己株買いによって290億円を手にするのだが、村上氏による追加買収は、この自己株買いに備えた玉の確保だったことは間違いない。

「村上効果」は今回のスキームに明確に現れている。買収提案を受けたアコーディア経営陣が、フェアネスオピニオンを取得しているのだ。

議決権の3分の2を確保すれば、残る3分の1から、その保有株を本人の意思とは無関係に強制的に買い取れるスクイーズアウトが日本で解禁されたのは2006年5月のこと。米国の制度を輸入したものではあるが、米国の制度との違いは、買取り価格の公正性を担保するための手段が日本ではあまり講じられていない点にある。

日米を問わず、買収提案を受けた経営陣は、条件や価格が自社の株主にとって不公正ではないかどうかを検証、判断しなければならない。検証にあたっては、第三者の評価機関に妥当な買収価格の算定を依頼するわけだが、米国では評価機関のフェアネスオピニオンが義務付けられているのに対し、日本では任意であるという点だ。

フェアネスオピニオンとは、評価機関自身に自身の評価が財務的見地から見て妥当なものであることを宣言させるもの。当たり前のようでいて実は当たり前ではない。評価書そのものに開示義務があるわけでもないので、買収価格は買収者の意のままになりやすい。評価機関もビジネスなので、買収者が決めた価格ありきで評価書を作成する機関の方が重宝がられる。

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