アコーディアvsレノ、5年越しの争いに終止符 USJ、コメダを買ったMBKと組み上場廃止へ

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PGMに続きアコーディアも株式市場を去ることになった(撮影:大塚一仁)

194億円の手切れ金は高いのか、それとも安いのか――。

11月30日、ゴルフ場運営2強の一角・アコーディア・ゴルフのTOB(株式公開買付)が始まった。買付者は投資ファンド・MBKパートナーズ傘下のSPC(特定目的会社)だ。

MBKは、米国の有力投資ファンドであるカーライルグループをスピンアウトしたメンバーが創設したファンドで、日本、中国、韓国を投資対象としている。日本ではライブドアの子会社だった弥生やTASAKI、USJ、コメダホールディングスなど5社に投資実績がある。

2017年中に上場廃止へ

MBKはアコーディアの完全子会社化を前提にしており、2017年1月18日まで実施されるTOBで3分の2以上の応募を獲得できたら、会社法の規定に則って、応募しなかった株主からもその保有株を強制的に買い取る、スクイーズアウトを実施する。

アコーディアの時価総額はTOB公表直前の段階で約730億円。今年9月末時点で有利子負債が712億円ある。TOB単価は公表日前日終値に15.8%のプレミアムを乗せた1210円なので、株式の取得で862億円、有利子負債の借り換え資金を含めると、総額1500億円強の買収案件だ。

それにしてもなぜ今、スクイーズアウトなのか。現在のアコーディアは決して業績不振企業ではない。今2017年3月期は売上高487億円(前期比0.3%増)、営業利益73億円(同0.1%減)とほぼ横ばいの見通しだ。

会社側は「上場していると大胆な資金の使い方ができない。最近は売り物のコースが出ても、思い切った価格を出せず、買い負けする機会が増えている。さらに、破たんコースを買収し、大々的に改装の手を入れてから既に十数年が経過しているコースも出てきている。取得と改装、そのための資金調達という点で、スポンサーがいた方がいいという判断」(会社側)だという。

だが、この見解を額面通りに受け止めることには無理がある。証券界からも、ゴルフ業界からも「村上氏にお引き取りいただくための苦肉の策」と見る声が出ているからだ。

現在、アコーディアの筆頭株主となっているのは村上世彰氏率いるレノ。共同保有しているグループ会社と合わせて発行済みの18.94%、議決権の22.77%を握っている。今回のTOBについては、レノ側とは既に話がついていて、応募契約も締結済みだという。「結果的に村上氏を利することになる融資は銀行としては出しにくい。資金調達の面で考えると、村上氏にお引き取りいただく効果は小さくない」(メガバンク関係者)。

2013年に村上氏によるアコーディア株の保有が公表されてから、これまでに投じた金額は総額約380億円強。村上氏は会社側が2014年8月に実施した自己株買いで296億円弱を、今回のTOBでは194億円を回収しており、合計は490億円となる。村上氏が満足しているのかどうかはともかく、4年間で29%、1年当たり7.25%という利回りに客観的に見れば、健全な上場会社への投資案件としては、上々の成果を収めた案件だったとはいえるだろう。

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