「選手視点の中継」というスポーツの大革命 仮想現実はスポーツをどう変えるか?

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VRというと、「Oculus Rift」「HTC Vive」そして「PlayStationVR」など、1台数万円以上する、いわゆるハイエンド(高価格帯)に分類されるVR専用機器をイメージする方が多いであろう。しかし、実際にはスマートフォンをディスプレイ代わりにする紙やダンボール製の1000円程度で買えるゴーグルなど、さまざまなVRデバイスが存在する。たとえば、スマートフォンに対応したインターネット動画配信サービスがVRコンテンツを放送すれば、手元のスマートフォンと安価なゴーグルを組み合わせることで、誰でも手軽にスポーツのVRコンテンツを楽しむことができるのである。

ICT活用で競技レベルも向上

VRという技術は、スポーツにおけるもうひとつの主体である競技者向けにも活用可能であり、米国ではすでに競技レベルの向上に用いられている。米国NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)に所属する各チームは、新たな試みとして米国STRIVR LabsのVR映像をトレーニングに組み込んでいる。

STRIVR Labsはアメリカンフットボールやバスケットボール、アイスホッケーなどの競技のVR映像を選手のトレーニング向けに提供している企業である。アメリカンフットボールの各チームは、試合中に必要となる視野の広さおよび判断力の的確さを選手に身に付けさせるトレーニングで、過去の試合映像の追体験や、想定した動作の試行などにVRを活用している。特に攻撃時の司令塔となるクォーターバックは、相手チームの動きを瞬時に予測し、最適な攻撃手法を判断することが求められるため、VRの活用でトレーニングがより効率的になることが期待されている。

VRを用いた競技者向けの取り組みは日本でも開始されている。NTTデータが2017年からプロ野球の打者用のVRトレーニングシステムを販売する予定であり、その後、米国市場への展開を検討中と発表している。

また、競技者向けのICT活用はVRだけではない。米国のNBA(プロバスケットボールリーグ)では、ICTの活用により戦略が大きく変化した事例がある。

2000年代までのNBAでは、成功確率が比較的低い3ポイントシュートは重要視されていなかった。しかし、2013年にNBA機構が、試合中の選手の動きを可視化する(トラッキング)設備や、複数パターンの場面別に選手の動作傾向やその結果を収集できるシステムを整えた。得られたデータを分析したところ、3ポイントシュートの重要性、勝利への寄与率がそれまで考えられていた以上に高いことが判明した。ICTの活用により、NBAでも勝利につながる新しい要素が判明したのである。

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