ホンダの屋台骨「シビック」はなぜ復活したか 米国で絶好調、来年にも日本に「再上陸」

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先代までとの違いは、開発段階から現地の開発拠点である「ホンダR&Dアメリカ」(オハイオ州)が主導権を握ったことだ。世界展開する主力車種を国外で開発するのはホンダ史上初めてのこと。6代目以降のシビックの現地生産比率は9割を超えていたが、開発の中心は日本が担っていた。それを今回、開発の拠点まで現地に移したことで、より現地ニーズに合った車を提供できるようになった。

さらに先代シビックの反省も活かされている。

ホンダとの取引が多い部品メーカー社長は「先代モデルはデザインも価格設定も失敗だった」と振り返る。2011年のニューヨークオートショーでお披露目された先代シビックだったが、販売台数がふるわず、翌年には早くも外観やシャシーなど広範囲なマイナーチェンジを余儀なくされた。ブルートゥースやリアビューカメラなど装備も充実させた。そうでなければ、当時台頭していた韓国の現代自動車グループなどライバルに対抗できなかったからだ。

今回のシビックは「フルモデルチェンジの段階でデザインや性能の完成度を高くしている。価格も戦略的だ」(前述の社長)。加えて、フルモデルチェンジの早い段階からセダンやクーペ、ハッチバックといった複数のボディスタイルをそろえたことも、好調な出足につながっている。

国内では2010年に生産終了

国内でもシビックは1990年代前半まで、多い年には年間10万台以上を販売するホンダを代表する車だった。「モーターファン」誌主催の日本カー・オブ・ザ・イヤーを3年連続して受賞したこともある。

だが、1990年代後半以降、販売が急速に低迷。2010年には国内生産を終了した。その後海外で生産された9代目のシビックは、国内向けには販売されなかった。

そのシビックが北米での大成功を受け、2017年度中にも国内で復活する。

ホンダの日本本部長を務める寺谷公良執行役員は、シビックの国内再投入の意義を「打倒輸入車」という言葉で説明する。最近のホンダの国内向け車種は、「フリード」や「ステップワゴン」といったミニバンや、小型車「フィット」、軽自動車など、生活の足となる車が中心になっている。その結果、スポーティな車が欲しい客層がスバルやマツダ、そして輸入車に流れてしまった。10代目シビックには、そうした顧客層をホンダに取り戻す役割がある。

シビックやCR-Vの好調で2016年も2年連続の最高販売を更新する米国市場の勢いを日本にも引き継げるか。”米国発”シビックへの期待は増すばかりだ。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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