「上司への尊敬」を重視する若手社員の育て方 常に居場所を求める彼らの特性を見極めよう

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これからは、「ファスト(速い)・トラック」と呼ばれる、採用の段階でリーダー人材を発掘、育成する、早期選抜も必要になってきます。イノベーションには、突き抜けた人材や、異能な人材が不可欠です。そのような人材を採用の段階で確保するために、特別枠を設け、入社後も外資系企業が導入しているようなファスト・トラックを経験させることが重要です。

ますます“ファーストキャリアマネジメント”が重要だ

「ファスト・トラック」は、いわば早期エリート教育です。「そんなことをしたら、小生意気で鼻持ちならないヤツになる」とか、「やっぱり石の上にも三年だろう」と思う人もいるかもしれません。ですが、そんな考えでは、もはや優秀な人材は採用も、育成もできないでしょう。もちろん、すべての企業で「ファスト・トラック」が有効だとは限りません。また、「ファスト・トラック」は、若手世代を「一握りのエリート」と「その他大勢」に固定化させることではありません。

つねに「居場所」を求める若手世代が、企業内に居場所を見つける方法として、たとえば「シェアード・リーダーシップ」が考えられます。1人のリーダーが組織を牽引するのではなく、「この分野ではAさんがリードし、あの仕事ではBさんがリードする」というように、必要に応じてチームのメンバーがそれぞれにリーダーシップを発揮できる仕組みを作る。皆でリーダーシップという要素を分け合うと言ってもいいでしょう。

シェアード・リーダーシップを実現できれば、誰もがリーダーとしての視点を持つようになり、私自身が訴え続けていることでもある、「一人ひとりが主人公になる」という日本企業本来の姿を取り戻すことにつながるはずです。皆がリーダーになるには、早い段階で上司が「この人はどんな場面で、どんなリーダーシップを発揮できそうか」を見極めることが不可欠です。

上司の決裁を必要とせず、大幅な権限を持たせる若手だけのプロジェクトなども有効かもしれません。若いうちに成功体験を積むことで、リーダーとしても大きく成長するでしょう。そのためにも、今後はますます“ファーストキャリアマネジメント”が重要になってきます。

かつての若手育成は、その企業が培ってきた仕組みや文化、マネジメント、リーダーシップに、若手が「適応する(適応させる)」ことが大命題でした。表面的には「若手の力を生かす」と言いながらも、実際は暗黙的に大前提となっていたと言えます。しかし、今後はこの考え方を変えざるをえないでしょう。

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