金融市場はこれから不安定化する危険がある マーケットは「FRBの役割」を忘れていないか

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実際、政策の方向性が変更になった際に、市場が実際の成果よりも期待で動くことは「異次元の金融緩和」を市場が歓迎したことでも証明済みだ。

しかも、ゼロ金利下でも量的緩和をすれば物価上昇と経済成長が実現できるという「異次元の金融緩和」の効果に関しては、当初から疑問視する向きもあった。それに対して、トランプ次期大統領が提唱する財政主導の政策は、政策実現に向けて財政面でのハードルは低くないものの、必要性とその効果は認められているものだ。

こうした中、市場参加者が気にしなければならないことは、トランプ氏の政策の実行性や効果ではなく、FRBの金融政策との関係である。認識しておかなければいけないことは、トランプ氏の政策に対する市場の期待が高まれば高まるほど、FRBの利上げの可能性も高まるという関係だ。

FRBは高まるインフレ圧力を止める必要がある

11月17日に行われた議会証言で、イエレンFRB議長は「引き締めが遅れれば、経済が過熱して急激に利上げしなくてはならなくなる」と、改めて「Behind the curve(政策が後手に回る)」のリスクに言及し、早期の利上げに意欲をみせている。

その背景にあるのは、法定準備預金の13倍にも及ぶ約2兆ドルもの資金が超過準備預金としてFRBに積まれていることである。現在の経済活動に使われていない大量の資金がFRBに積まれているのは、有望な投資先が少ないことの裏返しでもある。

こうした状況の中で、1兆ドル規模のインフラ投資計画を主張するトランプ次期大統領の誕生は、投資機会が増えることを意味し、多額の超過準備預金の一部が市中に流出する可能性を高めるもので、インフレ圧力が急速に高まることを意味する。これを食い止めるためにも、FRBにとって利上げは必要になってきたといえる。

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