日本の会社員に副業が必要な「本当の理由」 目先の稼ぎを得るというだけではない

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大企業ならでは……の問題ともいえますが、例えば、エンジニアとして優秀な人材であるが、社内に適したプロジェクトがない。あるいは事業開発が得意だが、現状で該当部署への異動はできない、と適材適所が実現できない。こういったことは非常に多いです。

人材採用は緻密な将来予測に基づいて行われるわけではありません。「景気がいいから多めに営業職を採用しておこう」などと、目先の人材需要を充足させることが優先されて、その人材が将来的にミスマッチ、あるいは余剰になってしまうことがあるのです。

ただ、その人たちをリストラするほど会社の業績が悪化していないかぎり、上記のような社内失業やマンネリ感のある仕事しかないという社員が発生してしまうことになります。こうした状態を打破するため、副業が容認されたのではないか、と筆者は見ています。

社内では機会がないが…

取材してみると、こうしたキャリア開発を目的とした副業には、NPO法人の立ち上げ、ベンチャー企業のマーケティング支援、経営コンサルティング、研修講師などさまざまなものがあります。社内では、やる機会がないが、自らチャレンジしたくなりそうなものも多くあります。

こうした副業を通じて得た経験や人脈が本業で活かされることを期待しているのは、社員だけではないでしょう。実際、最近では日産、富士通、花王など副業を認める大企業が徐々に増えてきました。

大企業で副業機会を生かしているケースとして注目度が高いのがロート製薬の「社外チャレンジワーク制度」ではないでしょうか。薬剤師の有資格者がドラッグストアで店員として働くほか、地ビールの製造・販売をする会社を設立するなど、社外で多様な経験を積んでいる社員が出ているとのこと。こういった経験が新しい発想を生み出し、行動力のある社員を育てると考えて推奨しているようです。

さて、日本政府は、会社員が副業をしやすくするための環境整備を進める方針を打ち出す予定。大企業が優秀な人材を抱え込みすぎているとの認識から、就業規則を見直すときに必要な仕組みなどを盛り込んだガイドライン(指針)を策定し、企業の意識改革を促すようです。あと5年も経つと副業経験が社内でのキャリアアップの前提条件となる会社も登場するかもしれません。みなさんであれば、どのような仕事をしてみたいでしょうか。ぜひ一度考えてみてください。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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