若い世代が「マジでもらえる年金」はいくらか 「現役時の手取り」と比べてどれだけ落ちる?

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ちょうど今、国会では、年金の改正法案が通りつつある。

改正法案は、物価が下落しなくても、賃金が下落した場合に年金支給を減額する内容を含み、野党・民進党などは「年金カット法案」と呼んで批判しているようだが、もともと年金の原資は賃金なので、支給額と賃金との連動には違和感がない。

加えて、当面支給額をカットしない場合、現役世代の負担がより重くなる理屈で、このバランスを評価すること抜きに、支給額のカットだけに注目して批判しようとするのは、議論として不正確な政治的人気取りであって残念だ。加えて、有効な人気取りになるかどうかさえも怪しい。現役世代、特に若い世代で、公的年金に関する意味が分かる人は、民進党をますます嫌いになるだろう。

「本当の年金手取り額」は現役世代の何パーセント?

さて、個人が老後を見据えた将来のプランニングを考える場合、年金は重要な意味を持つが、今回の改正法案以上に、今国会で内容的に意味があったのは、「所得代替率」に関する、長妻昭氏と塩崎恭久氏の新旧厚労大臣のやりとり(10月21日の衆議院厚生労働委員会)だった。

所得代替率とは、65歳における年金額が現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)の何%になるかを示すものだ(所得代替率についての厚労省の参考HPはこちら)。

長妻氏が、「所得代替率の計算にあって、分母(現役世代の所得)が税金・社会保険料を差し引いた手取り所得なのに、分子となる年金支給額が、これらを差し引いていない名目額なのはおかしくないか、と指摘したのに対して、塩崎氏は、確かにそうなっている旨を答えたのであった(編集部注:詳しくは再掲の衆議院厚生労働委員会での塩崎大臣の答弁を参照。塩崎大臣は長妻氏の提起に意味があることを認めながら、所得代替率の定義の仕方やこれまでの連続性などを勘案して、次期財政検証に向けて引き続き議論すべき課題とした)

2013年度の所得代替率は62.6%とされていたが、これを個人にとっての実質値である分子も分母も「手取り所得ベース」で計算すると、53.9%になるという。約14%のダウンであり、倍率は0.86倍だ。

推測するに、厚労省的には、これまでそういう数字で議論してきたので、今間違えたわけではない(=今の俺たちは悪くない)という理屈が立てばいいのだろう。

しかし、この役に立たない所得代替率で、「将来も(物事が想定通りに行くとだけど…)、所得代替率は50%を維持します。だから、年金は安心です」という説明を、「公的年金は、もちろん手取りで、現役世代の可処分所得の半分が確保できる(らしい…)」と漠然と考えて来たにちがいない多くの国民は、老後の資金計画を考え直す必要が出て来た。

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