王道モテ服で固めた40歳女性が射止めた男性 「勝負」のためには割り切りも必要だ

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「思い描いていたような結婚生活ではありませんよ。でも、やるべきことはすべてやったうえでの結婚なので迷いはありません。これ以外の道はなかったと思える。それが幸せです」

結婚生活のどのへんがイメージとは違ったのか。まずは子どもである。美香さんはいま、3歳の息子をかわいがって育てているが、本来は子ども好きではない。結婚しても必ずしも子どもが欲しいとは思っていなかった。しかし、和則さんは「絶対に子どもが欲しい」という希望を持っていた。

「なのに40歳の女性と結婚するなんて、かなりの天然さんですよね。不妊治療を受ける受けないでケンカもしました。どちらかが原因で子どもができないことがわかったらどうするつもりだったのでしょうか? どんな診断結果でもお互いを責めないことを約束しました。すぐに子どもができて、健康で生まれて来てくれたので結果オーライですけど……」

勝負服からジーパンへ

美香さんによれば、和則さんは家族思いだけれど先々のことはちゃんと考えられないタイプ。独身時代に東京の下町にファミリータイプのマンションを購入し、現在も多額のローンを抱えている。それも夫婦げんかの火種になった。

「ローンの返済計画を見たら、70歳まで返し続けることになっていました。そんな年齢まで働ける保証はありませんよね。私は下町にも住みたくなかったので、このマンションは売ってしまって、私の実家に近いところに小さなマンションを買いたかった。でも、夫はどうしてもここに住みたいと言い張ります。仕方ありません。その代わり、家計は私が管理することにしました。いま、ローンを10年後には返し終えることが目標です」

和則さんにはいいところもある。毎日19時にはきっちり帰宅し、子どもを風呂に入れる。一人暮らしが長かったこともあって家事はひととおりできる。美香さんの目から見ても、家事や育児の分担はほぼ半々だ。土日も基本的には家にいて、一人好きの美香さんが出かけるときは子どもの面倒を見ていてくれる。教育方針の違いなどで議論になることはあるが、キレてふてくされたりはしない。家計も含めた大きな判断は美香さんに任せてくれる。

「結婚したのが私で良かったと思いますよ。私は間違いに気づいたらすぐに軌道修正するし、先読みをすることもできます。おっとりしてかわいらしい奥さんと結婚していたら、夫は今ごろ自己破産していたかもしれません」

ジーパン姿でコーヒーを飲みつつ余裕の表情を浮かべる美香さん。今では下町での生活も満喫しているらしい。和則さんは今、勝負服を身に着けた美しい女性ではなく、将来を見据えながら家族を守ってくれる頼もしい妻にほれ込んでいるのかもしれない。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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