JR東日本、「自販機ビジネス」超絶成長のワケ 10年で売上高が約6割も増加!

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この新型自販機投入の狙いはどこにあるのか。

「駅では多くの工事が行われていて、その際に自販機に使っている電源が撤去されることも少なくない。これまでは自販機そのものも撤去せざるを得ず、お客様にご不便をおかけしていました。バッテリー搭載型ならば電源がない場所にも置くことができるので、こうした工事の都合などにも左右されにくい。また、イベントなどで利用者が一時的に急増するような駅にその時だけ増設することもできます」(本間氏)

電源いらずなので、災害などでの停電時でも稼働できるというメリットもある。今まで自販機が使いにくい場所にも設置の可能性を広げることができ、商圏拡大につながるというわけだ。開発にあたっては、バッテリーユニットのサイズをコンパクトにした上で稼働時間を維持することが課題になっていたという。

「ただ、現状ではバッテリーの運用時間やモジュールの交換をどうするのかなど、実用に向けての課題も少なくありません。テスト運用をしながら、増設するのか、どのような場所に設置するのかなどを考えていきたいですね」(本間氏)

取り切れていないニーズまだある

10周年を記念し、新宿駅のJR新宿ミライナタワー歩行者広場で開かれたイベント(筆者撮影)

自動販売機という商品販売のツールを武器に、商品開発から新型自販機の投入まで幅広く取り組む同社。一般の飲料メーカーなどとは異なり、製造から販売まですべてを一括して担っているため、利用者のニーズなどを的確に商品開発などに反映させることが可能なのが強みだという。

同社発足1年後に立ち上げたブランド「acure」は今年で10周年。ブランド名の周知を目的にロゴなどを改めたリブランディングも進めている。本間本部長は「まだ自販機で取り切れていないニーズがある」と、今後の展開にも自信を見せる。

「たとえばインバウンドもひとつの事例ですよね。今はまだ買い方や商品のジャンルを2カ国語で貼って案内しているくらいですが、ラインナップの展開も含めて考えていく余地はあると思います。お客様が楽しく買い物できるように、商品ラインナップや自販機の機体などさまざまな面でこれからも仕掛けていきたいですね」(本間氏)

ちなみに、同社は売り上げの7割を自動販売機から得ているという。駅という多くの人が集まる場所を活かし、最大限にニーズを引き出す自販機の展開。今後も今まで見たことのない新しい自販機や商品の登場が期待される。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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