路面電車の「速度オーバー」事故は防げるか ロンドン路面電車の事故で浮上した課題

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トラム横転事故現場付近の様子。死者7人、負傷者50人の惨事となった

11月9日早朝に発生した、ロンドン南部クロイドンで発生したトラム(路面電車)横転事故。車内に取り残された乗客の救出が難航し、11日朝にようやく車両の撤去が完了したが、現場付近の修復に時間がかかり、営業再開は18日となった。

最後まで取り残されていた2名の救出は、車両の撤去が行なわれた11日になり、最終的に死者は7名、負傷者は50名に達した。しかし、いまだに身元が分かっていない遺体が数名あり、身分証明書やDNA鑑定などによって身元の特定を急いでいる。負傷者は、現場に近いクロイドン大学メーデー病院とセント・ジョージ病院へ搬送されたが、そのうち20名は手足切断や肺の損傷など、重傷を負っている。

居眠り?失神?大幅速度オーバーで転覆

警察は、過失致死の疑いで逮捕された42歳の運転士をいったん保釈した。今回の事故の原因として、運転士が居眠りもしくは何らかの持病による失神、あるいは携帯電話を操作していた可能性が挙げられている。事故を起こした車両には、ハンドルのスイッチから手を放すと3秒後に警報が鳴って急ブレーキが掛かる、通称「デッドマンスイッチ」が設けられていることから、ハンドルから手を放さず、そのまま走行を続け転覆に至ったことが推測される。

16日に発表された鉄道事故調査委員会の中間報告によれば、ブラックボックスと車内に設置されたCCTV(カメラ)を解析しているが、このうちカメラについては作動しておらず、記録がないことが分かっている。一方、ブラックボックスの記録からは、事故発生時の時速は約70キロメートルで、制限時速を50キロメートルも上回っていたことが新たに判明した。

鉄道事故調査委員会は警察と共に、引き続き原因について慎重に捜査を進めているが、最終的な原因究明には、まだしばらく時間を要するとみられる。中間報告書の提出と合わせ、交通局および運行を委託しているファースト社に対しての安全勧告も行なわれた。

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