米国アパレル「時価総額トップ30」ランキング 1位はナイキがダントツ、ブランド復活も

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ダントツ1位はナイキ(写真:ロイター/アフロ)

米国では11月25日のブラックフライデーを皮切りに、年末商戦がスタートした。主役の一つはアパレル関連企業だ。東洋経済オンラインは『米国会社四季報』(東洋経済新報社)編集部と連携してアパレルに関連する企業について、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータを用いて、会社の規模を示す時価総額の上位30位をランキングした。基準は今年の10月末と前年同月末のものを比較した。さらに、「アスレジャー」「もがくブランド」「子供服」の3テーマに注目した。

トップはナイキ。同社は日本でもおなじみのスポーツブランドだが、昨年に続きダントツ。今年3月にスポーツオーソリティが破綻するなど販売チャンネルが混乱する逆風はあったが、不動の地位を確立している。同じスポーツ分野のアンダーアーマーもランキング6位とすっかり上位の常連。読売巨人軍のユニフォームを提供しているため、日本でも知っている人は増えただろう。両社とも積極的にアパレル分野に進出しており、気軽で軽快に動けるウェアーとして市場を開拓している。また、ムートンブーツで有名なUGGなどアウトドアブランドを傘下にもつデッカーズも昨年31位から今年26位に飛躍した。

『米国会社四季報』(東洋経済新報社)。米国の企業情報を見やすくまとめて掲載。業績・財務情報はもちろん、連続増配やIoTなどの投資テーマ、展開ブランド名、ライバル企業など企業をつかみやすくする付随情報も満載。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

最近のアパレル業界を語るうえで、「アスレジャー」というキーワードは外せない。アスレチック(運動)とレジャー(余暇)を組み合わせた造語で、たとえば、トレーニング・ジムに着る服ではあるが、外出着としてもおしゃれな服のことを指す。今年14位に上昇したヨガウェアのルルレモンが先駆といわれる。高級シャネルもデザインに取り入れるなどスポーツ関連にとどまらず、影響を及ぼしている。

ファッション化は、米国企業が得意な戦略のひとつ。たとえば、Tシャツはもともと海軍の肌着だが、下着メーカーのヘインズ(今年9位)が発祥。また、チャンピオンが大学の運動着として開発し、名門大学のロゴが入った。文化の担い手が軍隊と大学であった時代、若者が飛びついた。その後、様々なデザインが登場し、普段に着るファッションのひとつとして定着した。NBA(プロバスケット)のスター選手であるマイケル・ジョーダンの名前を冠した「エア・ジョーダン」シリーズもその一例だ。

最近ではミランダ・カーのような有名な女優やモデルなどセレブがアイコン役を担っている。今後こういった戦略が一段と浸透すれば、スポーツとアパレルの境目はなくなるかもしれない。

古豪コーチは復活の兆し?子供服が飛躍

一方、ブランド復活の兆しも。代表格が前年11位から今年8位まで挽回したコーチだ。革製品を中心とした手に届く高級品というイメージ。高級ブランドは、リーマンショック、中国景気の後退に加えて贈収賄に関する規制強化のダブルパンチによる深い谷に沈んだが、今年に入り、ようやく底打ちの兆しが一部に見え始めている。コーチは、ブランドの再生を賭けた1941シリーズを展開。固定客層に向けた商品の見直しと若者の開拓の両面をうまく進めている。

ところで、日本でも百貨店閉店のニュースはよく耳にする。米国ではその動きは急だ。百貨店のメーシーズは2017年初をメドに全体の1割を超す100店規模の閉店と大ナタをふるう。売場面積が最大の同社だけに、高級ブランドは販売打撃に戦々恐々だ。一方で、アマゾンなどネット販売が勢いを増している。また、今年2位のTJX、同3位のロス・ストア、同16位のバーリントン・ストア、同25位のDSWのような格安アウトレットが幅を利かせ、小売側に主導権がある。百貨店のなかでもノードストロームは、「Nordstrom Rack」の名前でアウトレットの出店を加速させている。

このような状況のなか、ブランドは過度な中国シフトの見直しとグローバルに展開するネットに軸足を置いた販売網の構築が喫緊の課題となっている。ただ、GAP、ラルフ・ローレン、フォッシル、GⅢアパレル(カルバンクライン、リーバイスが傘下)のように、いまだ苦戦している企業も多い。ブランド企業が本格回復するにはしばらく時間がかかりそうだ。

最も躍進したのが、昨年40位から今年28位に入ったチルドレンズプレイス。日本には進出していないため、なじみがないかもしれないが、子供服ブランド大手の一角。何か特別にヒットしたというわけではなく、在庫を管理して着実に利益を伸ばした。子供服は大人服に比べて流行り廃りがない市場だが、米国では、最大手のランキング17位のカーターズのほか、GAPやラルフ・ローレンなど有名ブランドがこぞって参入する重要なカテゴリーだ。今年の年末商戦もランキング上位組が実力を発揮するのか。それとも新顔が登場することになるのか注目だ。

次ページこれが米国のアパレル企業・時価総額ランキングだ
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